本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

2008-01-01から1年間の記事一覧

代書屋/柳家権太楼

無学で騒々しい依頼人と無愛想で慇懃無礼な代書屋との掛け合いが笑いを誘う落語である。柳家権太楼については多くを知らない。20年ほど前に「らくごin六本木」という深夜番組があり、それで何度か見たことがあるくらいだったが、ここまではじけた芸風だっ…

ひとつ灯せ/宇江佐真理 

何だかよく分からない時代ホラーミステリーという感じである。主人公の平野屋清兵衛は料理茶屋を営んでいるが、息子に店を渡して隠居した頃から徐々に衰弱し、あわやのところにまでに至るが、幼なじみの蝋燭問屋伊勢屋甚助が読経することで死に神を追い払っ…

らくだ by 桂米朝

動画サイトで「らくだ」という落語が聞けないかと思って探しましたら、ニコニコ動画にアップロードされていました。らくだというあだ名のやくざな男、らくだと同類の兄貴分、実直な屑屋が織りなす不気味なドタバタをブラックに描いた名作で、「落語とは人間…

東京物語/奥田英朗 

昭和34年生まれの田村久雄が名古屋から上京し浪人生活を送り初めた1978年から、バブル期のコピーライターとし活躍している1989年までのある一日を取り出し、恋や成長を描いた連作青春小説。 自分とほぼ同年代の作者が関わってきた時代背景にはとて…

きのこの収穫祭

母が生協の宅配で「きのこの収穫祭」なる椎茸栽培セットを購入しました。有機質の人工土壌(菌床)に椎茸金を植え付けたもので、ビニールを被せておくだけで椎茸が出てくるようなことが説明書にありましたが、それらしい物は見られず半信半疑。しかし、届い…

鬼平犯科帳スペシャル 引き込み女

wikipedia:鬼平犯科帳 昨日、連続時代劇として放映され好評だった「鬼平犯科帳」のスペシャルが放映された。原作者の池波正太郎が亡くなり、新作が書かれることはないので、これ以上の放送はないかと思っていたが、たまにスペシャルの放送があると非常に嬉し…

鴨川ホルモー/万城目学

京都大学の新入生たちが妖しげなサークル京大青龍会にスカウトされ、主人公の安倍は、タダメシのためのみに新歓コンパに出かけていくが、高貴な鼻を持つ女性に一目惚れし、サークルに入ることを決意。そして妙ちきりんなドタバタの幕が開く。京大青龍会は式…

十三夜

本日は十三夜らしいです(年によって違うんですね)。十五夜の満月だけを見るのは「片見月」と言ってよろしくないとかの話を知りまして、ベランダにて月見撮影を敢行致しました。今まで三脚を持っていなかったものですから、月の写真も上手く撮れなかったの…

東京日記2/川上弘美

日記エッセイ「東京日記」http://d.hatena.ne.jp/suijun-hibisukusu/20081007/p1の第二弾で。おかしさ、シュールさ、切なさに磨きがかかり、吹き出してしまう描写も多々。短い数行にズバッとドラマを込めるあたり、やはり手練れだ(笑)。 著者の母親が「私は…

東京日記/川上弘美

雑誌「東京人」の連載。 日常におけるやや突拍子もないことを短文にまとめているが、5分の4は本当のことだそうである(笑)。小説の、本筋とは関係ない寓話的部分を抜き出したような感じだが、それだけで掌編小説にもなっている。 歩道橋の上で出会った知人…

西遊記/平岩弓枝

平岩弓枝が中国奇書を翻案するとは思わなかったが、「道長の冒険」なども書いているので、アジアンファンタジーも得意なのかもしれない。 大筋は底本通りだが、石猿の誕生などはすっ飛ばし、玄奘の登場あたりから書き始めている。悟空の造形もわりあい子供っ…

電動歯ブラシデビュー

テニス肘ならぬ歯磨き肘(笑)を診てもらった整形外科の医師に電動歯ブラシを勧められまして、どれを選んだらいいものやら散々迷っておりました。 価格比較サイトや通販サイト、実店舗の家電店やドラッグストアも見て回ったところ、家電会社の製品と歯磨き方…

有頂天家族/森見登美彦

下鴨神社の糺の森に救う狸一家の、心温まる家族愛と痛快な活劇の物語。京都を舞台にひねくれ純情の主人公のドタバタを描くのがいつもの森見作品だが、人間ではないものを主人公にすることでベタベタな部分を書いてみたかったというのが作者の弁である。京都…

THE GREAT KAI & J.J. / J.J.JOHONSON AND KAI WINDING

J・J・ジョンソン、カイ・ウィンディングの楽しい両トロンボーンに、ビル・エヴァンス、ポール・チェンバースなど、豪華なサイドメンがからむ贅沢なセッションだ。スライドで音階を変化させるトロンボーンは、トランペットやサックスのように素早く派手な…

江戸の繁盛しぐさ こうして江戸っ子になった/越川禮子

江戸の繁盛しぐさ―イキな暮らしの智恵袋 (日経ビジネス人文庫)数年前、朝日夕刊のマリオン欄に江戸のマナー「江戸しぐさ」に関するコラムが出ており、興味深く読んでいた。公共広告機構のCMにもなっていて、わりあい最近まで流れていたはずだ。著者はマーケ…

異界/鳥飼否宇

那智勝浦を舞台に、ある医師一家を襲う不気味な事件の解決に南方熊楠が挑むという熊野伝奇ミステリー。おどろおどろしく生と死を豊饒に抱え込む熊野の地は元から好きな土地だし、更に異形扱いされるサンカが絡むとなればこれはもうたまらない設定だ。産科も…

月末月初に検索エンジンは踊る(らしい)

団体サイトのヘナチョコウェブマスターをしているので、検索エンジンの掲載順位というものが大変気になる。月末月初にインデックスの登録改変がなされて順位が乱高下するらしく、その世界では○○○○ダ/ン/スと呼ばれているそうだ。○○○○八/分というのもあるらし…

アースダイバー/中沢新一

縄文時代、海は現在よりもかなり内陸まで入り込んでおり、海に突き出た半島や岬の部分に霊域があった。現在では洪積層と沖積層と区分される境目であり、ここには現在、寺社や古墳が残っているのだとする都市探訪記。皇居が東京の中心であるのも、集落の中心…

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

3ヶ月ほど前から左肘に鈍痛が出ていた。動かしたり、重いものを持ったりするとピキピキと痛んだが、いつか治るだろうと思いながら一向に治癒せず、致し方なく整形外科へ。 動かしたりひねったり折り曲げてみて痛みの出る部分を探し、あっさりテニス肘だろう…

銀輪の覇者/斉藤純

昭和9年、東京でのオリンピック開催に向けて、自転車競技のアマチュア化が推し進められている時代に逆行するように、下関から青森までを駆け抜ける、賞金付きの大日本サイクルレースが開催される。実用車のみという参加条件、食わせ者らしい主催者、元選手…

男たちは北へ/風間一輝 

自転車の旅と自衛隊内の謀略が交互に語られる、センチメンタルな傑作ロードミステリー。狂気の自衛隊幹部によるクーデター計画の概要を記した印刷物が、偶然のことから桐沢風太郎(自転車で旅するフリーのグラフィックデザイナー)に拾われる。これを奪回す…

「水滸伝』から中国史を読む

昨日のNHK教育「歴史に好奇心」は『「水滸伝』から中国史を読む』という特集で、北方謙三が北方版水滸伝の話題を中心に、水滸伝の世界や自己の中国史観などを語っている。 http://www.nhk.or.jp/shiruraku/200809/thurseday.html中国史の世界に近代的な革命…

○○飯(笑)

便所飯という言葉を最近の新聞で知った。学者が書いていたもので、昨今の若者は、一人で食事をしていて「友達のいない奴」と思われるのが嫌さに、トイレに籠もって食事をすることを言うそうだ。都市伝説だという説もある一方、確かにそういう傾向があるとい…

快盗タナーは眠らない/ローレンス・ブロック

元アルコール中毒の探偵が己と闘いながら事件と対峙するマット・スカダーシリーズや、泥棒と古本屋を兼業するバーニーが活躍する軽妙なシリーズなどで人気のあるローレンス・ブロックだが、60年代に執筆していた軽スパイ物が今頃になって翻訳されたそうだ。…

リスト

畏友(と言わせて頂くのもおこがましいのですが)屁爆弾さんがはてなキーワードにはどんな言葉が登録済みなのか試しに文字打ちしてみてもいいですかリストというエントリーをされていまして、面白そうなので真似させて頂きました(←独創性のない奴)。下記の…

カネ

新聞でよく見る「政治とカネ」という表記がどうも嫌だ(「ヒト・モノ・カネ」なんて使い方をすることもある)。何故、「金」とか「資金」とか、何なら「お金」とか書かないのだろう。「金」では金属と紛らわしいのか、「資金」だと綺麗そうな感じなのか、「…

ぐるぐるまんでる

複雑系―科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち (新潮文庫) かつてSF者だったせいで、宇宙、天文、生命科学などに入れ込んでいたことがある。理系音痴なので入門書止まりではあるが、驚くべき科学的真実にワクワクしたものだ。その手の本の一冊が「…

お江戸風流さんぽ道/杉浦日向子

お江戸風流さんぽ道 (小学館文庫) 杉浦女史が江戸の生活やファッションや食を語った「ごくらく江戸暮らし」と、テレビ版組の講義録「ぶらり江戸学」を一冊にまとめたもの。江戸の楽しさ、面白さが興味深く綴られている。・枯野見、氷鉢見(凍った池を眺めて…