昨日のNHK教育「歴史に好奇心」は『「水滸伝』から中国史を読む』という特集で、北方謙三が北方版水滸伝の話題を中心に、水滸伝の世界や自己の中国史観などを語っている。
http://www.nhk.or.jp/shiruraku/200809/thurseday.html
中国史の世界に近代的な革命運動を持ち込んだ波瀾万丈の物語である北方版水滸伝が学生運動の攻防をモチーフにしているのは分かっていたが(団塊世代の歴史作家にありがちのパターンだ)、キューバ革命を重ね合わせていたとは知らなかった。志半ばで倒れるゲバラが晁蓋(ちょうがい)、革命を貫徹するカストロが宋江(そうこう)ということらしい。
また、中国の古典である水滸伝は、結末では梁山泊の反乱軍が政府軍に投降する「招安」で終わっているが、これも気に入らなくて独自の展開にしたということだ。
随分以前に平凡社中国文学全集版の水滸伝(駒田信二訳)を読んだことがあるが、確かにあの結末はしっくりこなかった。招安された後は危険地帯の戦闘に派遣され、やがて滅んでいくのであるからカタルシスなどあったものではない。波瀾万丈の豪傑譚なのに、何故にあのようなしょぼい結末になったものやら・・・。
しかし、三国志も敗者を主人公にした物語だし、必ずしも結末に重点を置かないのかもしれない。判官贔屓というのもあるだろうしなぁ。
北方版水滸伝は完結しているが、梁山泊の遺志を受け継ぐ青年楊令を主人公にした「楊令伝」が続々刊行されている(史実にない創作)。大河長編小説は、一気読みしないと登場人物を忘れてしまうので完結まで待たねばならぬが(笑)、今度は「史記」にまで手を付けているようで、北方謙三による中国史世界への探求はとどまるところを知らないようだ。