本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ドキュメンタリー・エッセイ・その他

わしらは怪しい探検隊/椎名誠

80年代に熱狂して読んでいた椎名誠のアウトドアエッセイ。このところキャンプに興味が湧いてきて、キャンプと言えばそういえばこの名著があったことを思い出した。 椎名誠の会社仲間や友人や親族などで結成された東日本何でもケトばす会(略称東ケト会)が…

祖母姫、ロンドンへ行く!/椹野道流

著者が祖母を連れてロンドン旅行をした経緯を軽妙に綴った旅エッセイである。スマホが登場しないから20年ほども前のことかもしれない。 身内の集まりで、かつてロンドンで暮らしたことのある著者が滞在のエピソードを語っているうちに高齢の祖母が「私もロ…

イラク水滸伝/高野秀行

イラクの湿地帯(アフワール)を旅した記録である。コロナ禍をはさんで5年ほどのスパンで書かれている。 砂漠のイメージの強い中東だが、イラクには湿地帯があり、古来、犯罪者や反逆者が逃げ込むアジールになっていたという。まさに水滸伝であると興味を覚…

特攻服少女と1825日/比嘉健二

人気のあった暴走族雑誌の「ティーンズロード」元編集長による、当時を振り返ったノンフィクション。ヤクザ専門ライターの鈴木智彦氏のお勧めだったため読んでみた。 レディースをフィーチャーした「ティーンズロード」はSM雑誌の別冊として始まり、当初はさ…

天路の旅人/沢木耕太郎

かつて戦前日本の密偵としてラマ僧になりすまし、内蒙古からチベットを放浪してその顛末を「秘境西域八年の潜行」という著書に著した西川一三の旅の記録であり、評伝ノンフィクションでもある。西川は日本の敗戦後もそのまま大陸に残り、ラマ僧に扮したまま…

ぼけますから、よろしくお願いします。/信友直子

認知症の義母のことをネタにした「全員悪人」の村井理子女史が推しているので読んでみた。やはり母親の認知症を巡るノンフィクションである。 全員悪人/村井理子 - 本・花・鳥(ほん・か・どり) 著者はドキュメンタリーの映像作家で、両親が元気なうちから…

語学の天才まで一億光年/高野秀行

辺境を旅して様々なルポやエッセイを発表している作家が、若い頃からいかにして各地の言語を習得してきたかをユーモラスに記している。 早稲田大学探検部時代、コンゴに遠征するにあたり、かの地のかつて宗主国言語あったフランス語を覚えようとしてして電車…

美麗島紀行/乃南アサ

美麗島とは台湾のこと。台湾を訪ねながら、かの土地の歴史や風土を思索的に綴った紀行エッセイである。 台湾は、元々は中国の辺境であり、スペインやオランダが植民地にしようとしたことがあったり、日本の領土になったり、戦後は国民党が本土から逃げてきて…

父ちゃんの料理教室/辻仁成&ハシビロガモ

パリで息子とともに暮らす著者が、息子に語りかけるように料理レシピを書き連ねた料理エッセイ。 BSプレミアムで不定期に放送される「辻仁成のパリごはん」という番組でプロはだしの料理の腕を披露しており、楽しく見ているが、それの文章版という感じ。 母…

ルポ池袋 アンダーワールド/中村 淳彦 花房 観音

数十年前、板橋駅前の社宅団地に住んでいたことがあるので中高生の頃は池袋でよく遊んだ。それなりに開けた街だが何となくいかがわしくて、東京のはずれという場末感もあり、そこがまた魅力な街だったと思う。 そういう点から本書に興味を持ったが、そこに描…

完全版 猪飼野少年愚連隊 奴らが哭く前に/黄民基(ファン・ミンギ)

大阪、猪飼野を舞台に、在日コリアンの不良少年たちの来し方を回想する昭和30年代グラフィティである。 現在こそコリアンタウンとして賑わう鶴橋界隈だが、当時は貧民窟のような場所だったらしい。在日コリアンが多く住み、暮らしは豊かではなく、粗暴少年が…

女ふたり、暮らしています。/キム・ハナ ファン・ソヌ

韓国人女性二人による同居エッセイ。キム・ハナはエッセイやラジオパーソナリティーやらで活躍する女性、ファン・ソヌはベテラン編集者で、現在は二人共に書いたり動画配信したりしているようだ。 気の合った二人は(同性愛者ではない)、主にキム・ハナの方…

漂うままに島に着き/内澤旬子

中年以降に小豆島への移住を決め、実際に暮らし始めた様子を綴る移住エッセイ。 東京の住宅の狭さに辟易してきた著者は田舎への移住を考え始めるが、どこにしようかというのが問題になる。小豆島に知人夫婦が移住していたのが契機となり、また隣の豊島にも知…

もういちど、あなたと食べたい /筒井ともみ

著名な脚本家である著者が、俳優や演出家など、それまで関わってきた業界の人々(一部に一般人)の思い出を、食と共に語っている。 伯母夫婦が俳優であった家で育った著者は派手な芸能界とは無縁の志向を持っていたはずだが何故か脚本家に。大物俳優、演出家…

JK、インドで常識ぶっ壊される/熊谷はるか

私立中高一貫校に通い、高校への進学でキラキラJKライフを夢見ていた著者は、父の赴任によりインドで暮らすことに。インクレディブル・インディアに投げ出され、その混沌ぷりをつぶさに語っている。 本書についてはネットニュースに一節が掲載されていて、そ…

四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼/上原善広

路地(同和地区のことを中上健次に倣ってそう呼んでいる)出身の著者が、四国遍路を歩きながら周辺の路地を訪ね、また、ハンセン病者や乞食など、遍路をしながら生きながらえた人々(職業遍路とか草遍路などと呼ばれる)を考察したルポ。この世の枠組みから…

私の台所/沢村貞子

名女優、沢村貞子が料理を始め家事の細々、着物、人付き合い、仕事などについて語る随筆の名作である。ずいぶん昔に母の誕生日にプレゼントしたことがあったなぁとたまに思い出していたが、職場の隣にある公共施設の図書コーナーに40年前に出版された本がそ…

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ

イギリスのブライトンに暮らす著者(保育士でエッセイやルポのライター)が、アイルランド人と日本人の混血である息子をモチーフに、イギリスの教育や格差や差別や分断をユーモラスに描いた家族エッセイ。ベストセラーが文庫化されたので読んでみたらかなり…

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語/内田洋子

著者は通信社を経営しつつイタリア関係のエッセイを何冊も出しているらしい。文庫の新刊広告で「旅する本屋」に惹かれて読んでみたくなった。 ベネチアで、親切で知識該博な古書店を見つけた著者はその店で何かと買い求めるようになる。そして親しくなった店…

フルーツポンチ村上健志の俳句修行/村上健志

短歌や俳句のバラエティで活躍する村上健志が様々な句会にゲスト参加した記録である。著述は主に編集者が行っている模様。著者の俳句はわりと叙情的で、更に発見があり、詩情を漂わすのが上手い人だと思う。 句作はしないが、鑑賞はそこそこに面白いので本書…

兄の終い/村井理子

疎遠な仲で、遠地に暮らす兄が急死し、その後始末の顛末を描いたエッセイ。認知症の義母を描いた「全員悪人」とか、この著者は家族を題材にすると筆が冴える感。 suijun-hibisukusu.hatenablog.com 偏屈で金にだらしなく、母親と共依存であったような兄は、…

下戸の夜/本の雑誌編集部下戸班編

親譲りの下戸なので読んでみた。 下戸に関するエッセイやらコラムやらを集めたアンソロジーである。夏目房之助や、小松政夫が語る植木等のように、飲めないのにお酒の雰囲気で盛り上がれる人もいれば、武田砂鉄のように酒飲みの遠慮のなさが嫌だという人もい…

しくじり家族/五十嵐大

編集者、ライターである著者が、かなり問題のある自分の家族を語ったデビュー作である。 著者は祖父が倒れたとの報に帰郷することになった。問題のある家族から距離を置きたかった著者にとって久々の故郷である。 祖父は元ヤクザの乱暴者、宗教を嫌う祖父のD…

空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる 天気の図鑑 /荒木健太郎

気象庁気象研究所研究官である著者が、雲や雨や虹や夕焼けや竜巻や、その他気象に関するあれやこれやを面白おかしく解説している。 図鑑と銘打っているが、見開き2ページで一項目になっており、天気に関するコラム集という感じ。 雲(特に入道雲)や夕焼け…

チャリング・クロス街84番地 増補版/ヘレーン・ハンフ

アメリカ人の女性作家がロンドンの古書店と文通を重ねた書簡集。ユーモラスで滋味豊かでほのぼのする。 ヘレーン・ハンフは古書を愛しており、様々な古書の注文を出すが、ユーモラスで時に我がまま気ままな感じもあってまことに楽しい。返信してくるフランク…

旅のつばくろ/沢木耕太郎

紀行エッセイかと思っていたが、旅に対する思いを綴ったコラム集という感じか。JR東日本の新幹線車内誌「トランヴェール」の連載から収録した物だそうで、なるほど東日本方面の内容が多い訳である。 著者は若い頃から国内外を放浪してきた人だから旅に対する…

極夜行/角幡唯介

文庫化にて再掲(と言う名の使い回し(笑))。 探検家・冒険家である著者が、北極圏の極夜(一切日が昇らない時期)の数ヶ月、雪と氷と暗闇の中を歩き続けた記録である。真の闇と、極夜が終わって最初に現れる日の光を体験したかったとのことだ。この時41才…

全員悪人/村井理子

義母の認知症を義母の一人称で語っているノンフィクション・ノベルとでも言えるだろうか。認知症患者からはこういう風に世界が見えているのかと思わされる。 義父は脳梗塞のリハビリ中で、妻の認知症に苦労させられているが、そういう顔を見せる夫は夫にそっ…

ニッポン巡礼/アレックス・カー

日本在住の東洋文化研究者で地域再生にも携わる著者が、「かくれ里/白洲正子」にインスパイアされて隠れた名所を経巡った紀行随筆。写真多数。 能登や萩などの有名観光地も出てくるが、確かにさほど派手な土地には訪れておらず、地元に残る文化や歴史を静か…

サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う/鈴木智彦

文庫化にて再掲(と言う名の使い回し(笑))。 ヤクザ専門のライターが、日本の魚類の流通にいかに密漁が関わっているかを詳細に取材したノンフィクション。 北海道でのナマコの密漁(中国に高く売れるらしい)、三陸でのアワビの密漁(石巻に密漁団の本拠…