本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ドキュメンタリー・エッセイ・その他

俳句、はじめました 吟行修行の巻/岸本葉子

エッセイストである著者は俳句を趣味としているが、見たものを即座に詠まなければならぬ吟行を苦手としており、吟行句会に参加させて貰って修行した記録の俳句エッセイ。 行った先は新宿御苑や東大駒場キャンパス(著者の母校)やら靖国神社やら。 正直なと…

キリン解剖記/郡司芽久

幼い頃からキリンが大好きで、大学でキリンを研究テーマにした著者が、キリンの第一胸椎が頸椎の形態に似ていることから新たな発見をするまでを描いた生き物エッセイ。これまでに30頭のキリンを解剖しているそうで、解剖数で世界一である(かもしれない)そ…

表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬/若林正恭

文庫化にて再掲、という名の使い回し(笑)。 漫才コンビ「オードリー」の若林正恭によるキューバ旅行記。何かのエッセイ賞を受賞したと話題になっていたので読んでみた。社会問題についての家庭教師を付けているという著者は、格差とかネオリベなどについて…

中国くいしんぼう辞典/崔岱遠

中国人の著者が中国料理について詳細に語った食味随筆。原題にある「吃貨(チーファ)」が食いしん坊に当たる言葉だそうだ。 家庭料理から高級料理まで膨大な数の料理について記していて、作家の筆力もありその描写は実に美味そう。古典その他からの情報も援…

きのこのなぐさめ/ロン・リット・ウーン

ノルウェーで暮らすマレーシア女性(社会人類学者)が、きのこの魅力に取り憑かれることで夫に先立たれた悲しみから立ち直るまでを綴ったきのこエッセイ。 形、味、香り、毒の有無など、きのこの詳細を語りつつその魅力に触れていく。レアなきのこの出る場所…

わるい食べもの/千早茜

いわゆる食味随筆だが、嫌いなものなどネガティブな食べ物についても触れられていて、なかなかに趣深い。 著者が嫌いなのは牛乳で、想像しただけで戻してしまう話とか、歯茎を切開し骨を削って親知らずを抜く手術を経験した後の、口中にあふれる血液の味とか…

神戸・続神戸/西東三鬼

前衛俳句の旗手、西東三鬼が、新興俳句運動が特高によって弾圧された「京大俳句事件」で一時東京を逃れ、神戸で暮らした顛末を描いた私小説と言うべき物か。 著者はトーアロードに面した安ホテルに逗留し続けるが、住人にはエジプト人、白系ロシア人、中国人…

だいたい四国八十八ヶ所/宮田珠己

ユルい旅行記が特色の著者による、ゆる~い四国お遍路の記録。 近年、歩き遍路がブームになっているようだが、著者の場合、特に信仰心がある訳でもなく、若人の自分探しでもなく、単に四国をぐるっと一周徒歩で旅してみたいという動機。御朱印集めのスタンプ…

晴れた日は巨大仏を見に/宮田珠己

各地の巨大仏像を訪ね歩いた旅エッセイ。 牛久大仏や高崎観音のような、数十メートルもある巨大仏像は何となく面白味がある。以前は、宗教施設や資産家が俗っ気たっぷりに自己顕示欲にかられた建造物というイメージを持っていたが、昨今はあれはあれで面白い…

サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う /鈴木智彦

ヤクザ専門のライターが、日本の魚類の流通にいかに密漁が関わっているかを詳細に取材したノンフィクション。 北海道でのナマコの密漁(中国に高く売れるらしい)、三陸でのアワビの密漁(石巻に密漁団の本拠地があるとか、かの地をルーツとする者としてはち…

さわり/佐宮圭

武満徹の有名な作品「ノヴェンバー・ステップス」の琵琶を担当した伝説の琵琶奏者、鶴田錦史の評伝である。 鶴田錦史に関しては、以前に旅番組か何かで目にしたことがあるのだが、琵琶奏者であり実業家であり、男装で通した風変わりな女性であるらしいことが…

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ/橘玲

著者が十数年前に出版してベストセラーになった本に2015年現在の補足をした資産運用や投資についてのマニュアル本で、著者の他の著作と内容に共通する部分もある。 世に出回る金持ち本の要諦は「収入を増やす」「支出を減らす」「資産運用」の三つに大別され…

メメントモリ・ジャーニー/メレ山メレ子

旅と死について思いを巡らせている紀行エッセイ集。ウェブ連載されたときに読んでいるが、本になったものを改めて読んでみた。著者は会社員兼業のエッセイストで、ブロガーから著述業になったようだが、ブログ時代にブサカワ犬わさおを「発見」した人だ。 沖…

異国トーキョー漂流記/高野秀行

20年~30年ほど前の東京で著者が接した外国人との交流を綴ったエッセイである。タイトルは、外国人と歩いていると東京も異国に思えてくると言うことだそうだ。辺境ライターの異名を取る著者は、辺境を旅するために外国語の習得を目指して様々な外国人と接し…

転がる香港に苔は生えない/星野博美

中国への返還をはさんだ二年間を香港で暮らした滞在記である。著者には中国や香港への思い入れが強いらしい。 香港というとエネルギッシュな国際貿易都市というイメージがあるが、著者の暮らした下町は猥雑でけたたましくて貧民窟スレスレという感じ。狭い土…

臆病者のための億万長者入門/橘玲

著者は金融や投資について詳しく、その方面の著作が多数ある作家。金融小説なども書いているらしい。 本書は、株式、投資信託、不動産投資、宝くじなど、世の中に数多ある投資法のメリット・デメリットを詳細に教えてくれるが、もちろん投資必勝法などは書い…

世界のへんな肉/白石あづさ

地方紙の記者を退職後、3年かけて世界一周をした著者が、各地で食べた「へんな肉」について記した楽しい旅行記である。 インドで水牛カレーを食べ(牛は聖なる動物だが水牛は食べていいらしい)、イランで羊の脳みそサンドイッチを食べ、エジプトでラクダを…

医者には絶対書けない幸せな死に方/たくきよしみつ

亡母の生前には死の準備をしているようでこの手の本は手に取れなかったが、介護を経験した身としては興味のある内容ではあった。 著者の母親は脳卒中発作で三ヶ月間病院で寝たきりになった後に死去しているが、楽には死なせて貰えないその様子を「拷問死」と…

驚きの介護民俗学/六車由実

ちょっと前に話題になっていたので知っていたが、介護と言うと身につまされそうでなかなか手を伸ばす気にはなれず、母の死を契機に読んでみた本。 著者は民俗学研究者だったが、何かで研究生活を諦め、介護職に転職した由。そこで出会うお年寄りの話が民俗学…

バッタを倒しにアフリカへ/前野ウルド浩太郎

数年前に話題になった新書。新進の昆虫学者がアフリカのモーリタニアでバッタ研究に打ち込んだ顛末を描く面白ノンフィクション。 ファーブル昆虫記で虫好きになり、バッタを偏愛するようになった著者は長じて博士号を取得するが、ポスドクという不確実な身分…

極夜行/角幡唯介

探検家・冒険家である著者が、北極圏の極夜(一切日が昇らない時期)の数ヶ月、雪と氷と暗闇の中を歩き続けた記録である。真の闇と、極夜が終わって最初に現れる日の光を体験したかったとのことだ。この時41才の著者は、経験値と感性と体力から言って人生の…

島へ免許を取りに行く/星野博美

著者が自らのルーツを辿った「コンニャク屋漂流記」は面白かったし、タイトルからおそらく合宿免許の経験を綴ったものだと思われ、自分も合宿で免許を取ったので興味が湧いて読んでみた。 人間関係がギクシャクしていた40代にひとつのチャレンジとして免許取…

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ/川上和人

気鋭の鳥類学者による鳥エッセイ。鳥類の形態、生体、分布、環境問題、人間との関わりなどを、ギャグを交えた楽しい文章で綴っている(よくも後から後から面白い言い回しを思い付くものだ(笑))。NHKスペシャル「東京ロストワールド」南硫黄島の探検メンバ…

ハングルの愉快な迷宮/戸田郁子

韓国人写真家に嫁いでソウルに住み、エッセイストとして活躍する著者が(韓国で出版した本がベストセラーになっているとか)、ソウルでの生活や文化や風俗や韓国語などについてユーモラスに語る好随筆である。単行本時の書名は「手の大きいお嫁さん 私の韓国…

市場のことば、本の声/宇田智子

新刊書店勤務の異動で沖縄に移住し、退職後に那覇の市場で主に沖縄関係の古書を扱う古本屋を開いた著者が日常を綴るエッセイ集。お客とのやりとり、古本屋の日常、市場の人たちとの付き合い、沖縄に関する古書の話など、短文ながら滋味深い文章で楽しむこと…

面白南極料理人/西村淳

南極の越冬隊に参加した海上保安官による一年間の越冬記録。快適な昭和基地と異なり、内陸へ1000km、標高3800mのドームふじはマイナス80℃の寒風にさらされるヘビーな赴任地だが、その生活を面白おかしく綴っている。主に調理担当のようで、食べ物の描写が多…

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る/川上和人

気鋭の鳥類学者によるタイトル通りの著作。恐竜の子孫である鳥類の観点から恐竜の生態を想像していくというもので、専門的で難解な著述にはたじろぎつつも、恐竜について楽しく語られている科学エッセイである。恐竜図鑑が書店に並び、何なら声入りのCGがテ…

オオカミの護符/小倉美恵子

著者の育った川崎市宮前区土橋は、著者の幼少期は昔ながらの農村の暮らしが残っていたが、高度成長期の開発ラッシュによって山野や田畑が切り開かれ、五〇戸だった農村が七千戸の新興住宅地へと変貌を遂げていく。失われていく農村の暮らしを記録しようと始…

遠い太鼓/村上春樹 

出版当時以来の再読。「ノルウェイの森」がベストセラーになる前後の3年ほど、ギリシャやイタリアの各地を転々としながら暮らした旅の記録である。中年にさしかかっている著者は抑鬱のようなものを感じているように思える。滞在した土地の人情や風俗を詳細に…

ハングルへの旅/茨木のり子

著名な詩人が韓国語学習のいきさつや韓国への思いを綴ったエッセイ。30年以上前に上梓された内容であるから、韓流ブーム以降のような韓国語熱は当時はまだなく、NHKの講座すらなかった時代では韓国語学習は奇異な目で見られたらしいが、韓国の詩人が好きであ…