本・花・鳥(ほん・か・どり)

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快盗タナーは眠らない/ローレンス・ブロック

アルコール中毒の探偵が己と闘いながら事件と対峙するマット・スカダーシリーズや、泥棒と古本屋を兼業するバーニーが活躍する軽妙なシリーズなどで人気のあるローレンス・ブロックだが、60年代に執筆していた軽スパイ物が今頃になって翻訳されたそうだ。

主人公エヴァン・タナーは朝鮮戦争で頭部に被弾し、以来眠れなくなってしまっているが、眠れない時間を学習に活かし、さまざまな言語を操れるようになっている。

ガールフレンドの祖母(トルコを追われたアルメニア人)から、迫害されたアルメニア人が隠した金貨のことを聞きつけたタナーはトルコで一攫千金を狙うが、趣味で様々な団体(各国の反政府組織も多数)に名を連ねていることからスパイと疑われ、トルコ入国後即座に身柄を抑えられてしまう。強制退去となったタナーは乗り換えのアイルランドで逃亡、様々な反政府組織に渡りをつけ、ここにドタバタスパイ活劇の幕が開くのであった。

あちこちで騒ぎを起こしては手配され、どんどん追跡者が多くなるあたりは映画ブルース・ブラザースを思わせる。冷戦下でもあり、東欧圏で民族蜂起を引き起こしたり、東西両陣営からスパイとして名指しされたり、かなりド派手な展開なのだ。終結の仕方がやや物足りない感もあるが、シリアスではない冒険ものとして面白かった。続刊があるなら読みたいものだ。