本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

西遊記/平岩弓枝

平岩弓枝が中国奇書を翻案するとは思わなかったが、「道長の冒険」なども書いているので、アジアンファンタジーも得意なのかもしれない。

大筋は底本通りだが、石猿の誕生などはすっ飛ばし、玄奘の登場あたりから書き始めている。悟空の造形もわりあい子供っぽく、師弟愛が色濃く描かれているのがさすが人情時代小説作家という感じだが、妖怪の悪辣さの中に少年犯罪的なものや家庭問題的なものも含ませ、今日的なニュアンスを盛り込んでいる。

さまざまな苦難を乗り越えて玄奘三蔵一行の旅は完結する。底本を換骨奪胎し、あっちのエピソードとこっちのエピソードをくっつけたり、新たな挿話を創作したり、かなりの力業だったと思う。

底本が妖怪との戦いをメインに据えたのに比べると、本作は師弟一行の絆をお涙頂戴に描いたところが特色だろう。鬱陶しいとも思えるが、これはこれで新機軸ではある。最終場面は香取慎吾孫悟空の影響だろうか。