2004-11-01から1ヶ月間の記事一覧
くさや、鮒ずし、モッツァレラチーズなどの癖のある食べ物をネタに、男女や生や死をユーモラスに、官能的に、ねっとりと描いたショートショート集。食べ物の描写が嫌らしくて美味そうで(笑)、酒好きの向きはさぞや飲みたくなることだろう(自分は下戸です…
村上春樹の作家生活25周年記念書き下ろし作品。ある歓楽街での一夜の経過を描き、眠り続ける美女の寓話が同時に進行する。物語は神の視点で語り続けられ、そこには「ぼく」という語り手の一人称がない。「風の歌を聴け」等のファンであった自分には、語り…
日常にぽっかりと開くミステリーゾーンや、人間関係の奇妙さを描くファンタジー・ショートショートだが、ボーイズラブっぽい話がやたらと多く、この作家の得意技だろうかと思った(笑)。怖くて切ないファンタジーや、さらりと美しく爽やかなボーイズなど、…
「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」など、軽妙な時代小説の書き手である米村圭伍の作品が好きです。歴史的な重厚さではなく、飄々とした人物たちの描写が楽しい作風でしょうか。新作の「おんみつ蜜姫」は、九州の小藩温水藩のおてんば姫君の活躍を描いたものです…
島崎藤村の足跡に時折現れる天明愛吉という人物について、戸籍上の甥に当たる著者が丁寧に辿った評伝で、陰から藤村を敬愛し続けた好人物の姿が浮かび上がる。明治期の牛乳屋牛肉屋、その後は家作持ちの家に生まれ、大事にされて成長した天明愛吉は、病弱故…
戦後の棄民政策で、甘い言葉に騙されて地獄のようなアマゾン奥地に送り込まれた日系移民の二世たちが、日本である企みを実行するという冒険小説的な作品。輻輳するストーリー、張り巡らされた伏線、登場人物達の葛藤と克己など、実に読みどころのある物語だ…