2004-01-01から1年間の記事一覧
くさや、鮒ずし、モッツァレラチーズなどの癖のある食べ物をネタに、男女や生や死をユーモラスに、官能的に、ねっとりと描いたショートショート集。食べ物の描写が嫌らしくて美味そうで(笑)、酒好きの向きはさぞや飲みたくなることだろう(自分は下戸です…
村上春樹の作家生活25周年記念書き下ろし作品。ある歓楽街での一夜の経過を描き、眠り続ける美女の寓話が同時に進行する。物語は神の視点で語り続けられ、そこには「ぼく」という語り手の一人称がない。「風の歌を聴け」等のファンであった自分には、語り…
日常にぽっかりと開くミステリーゾーンや、人間関係の奇妙さを描くファンタジー・ショートショートだが、ボーイズラブっぽい話がやたらと多く、この作家の得意技だろうかと思った(笑)。怖くて切ないファンタジーや、さらりと美しく爽やかなボーイズなど、…
「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」など、軽妙な時代小説の書き手である米村圭伍の作品が好きです。歴史的な重厚さではなく、飄々とした人物たちの描写が楽しい作風でしょうか。新作の「おんみつ蜜姫」は、九州の小藩温水藩のおてんば姫君の活躍を描いたものです…
島崎藤村の足跡に時折現れる天明愛吉という人物について、戸籍上の甥に当たる著者が丁寧に辿った評伝で、陰から藤村を敬愛し続けた好人物の姿が浮かび上がる。明治期の牛乳屋牛肉屋、その後は家作持ちの家に生まれ、大事にされて成長した天明愛吉は、病弱故…
戦後の棄民政策で、甘い言葉に騙されて地獄のようなアマゾン奥地に送り込まれた日系移民の二世たちが、日本である企みを実行するという冒険小説的な作品。輻輳するストーリー、張り巡らされた伏線、登場人物達の葛藤と克己など、実に読みどころのある物語だ…
遣唐使の護衛士として入唐した青年と、朝廷の高官である阿倍仲麻呂(朝衡)を軸に、政争や戦乱に揺れる玄宗と楊貴妃の時代を描いた中国歴史物。朝衡は朝廷で重きを為しているが、楊貴妃のいとこである楊忠国が宰相として政権を牛耳っており、この二人は政敵…
お茶を趣味(習い事?)を趣味とする著者の失敗談や、お茶の世界の奥深さをユーモラスに語ったエッセイ集。一番面白かったのは「名水点て」についての章。練習では水道水を使っても「どちらのお水ですか」「どこそこで汲んで参りました」というやりとりがあ…
人気俳優だったマイケル・J・フォックスの、若年性パーキンソンを発病してからの闘病と幼年期からの来し方を綴った自伝ノンフィクション。堅実な両親に育てられたいたずらっ子の微笑ましいエピソード、俳優として成功していく様子や、テレビ・映画作品の内…
にんべんの八代目高津伊兵衛(入り婿で、やや短気でのぼせ上がりやすい質だが、義侠心厚く、家業に精出す気持ちの良い男)を主人公に、幕末の動乱を乗り切るために奮闘する日本橋商人達の心意気を描いた時代小説。幕府の命運は尽きている、さりとて薩長には…
「しゃばけ」「ぬしさまへ」に続く、軽妙な時代ファンタジーの三作目。第一作の「しゃばけ」は第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。「しゃばけ」は長編だが、二作目、三作目は連作になっている。回船問屋長崎屋の若旦那一太郎は幼い頃から病弱…
源氏物語研究をテーマにした小説で、架空の巻が挿入されているというのが話題になった。平安風の雅な物語かと思っていたが、その架空の巻について推理していく、文学史ミステリーという感じだ。冒頭、主人公(古典文学研究者)が中学生の時に書いたという、…
詩情豊かなハードボイルド、酔いどれ探偵ミロシリーズの4作目。故郷のモンタナを離れ、前作で恋人となった女性との縁でテキサスでモテルと酒場を始めたミロだが、そろそろ退屈してきており、探偵仕事を再開している。妹をレイプし殺した犯人をおびき出すの…
無鉄砲で腕白な昇平が4才で初めて自転車に乗れた日、急坂を駆け下りる恐怖と快感にさらされながら草太の家の庭にダイビングしたことから始まる少年・青春小説で、タイトルの通り、二人のそばには常に自転車があるのだった。草太は昇平と対照的におとなしげ…
茶道の家元のどら息子が親子喧嘩の果てに家出、友人宅に転がり込んだら、何故か茶の湯の総本山京都へ行くことに・・・。公家装束で茶会をするのが趣味の数学の先生やら、飄然とした坊さんやら、ちょっと変わった茶人たちとの友情の中で成長していく青春小説…
茅田砂胡(かやだ すなこ)にはまっている。網友のレコメンドで読み始めたデルフィニア戦記シリーズは、カバーは少女漫画風でジュニア向けの体裁だが、中味は中世ヨーロッパ風仮想戦国ファンタジーという感じで、大興奮のシリーズだった。悪辣な臣下の陰謀で…