本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

アースダイバー/中沢新一

縄文時代、海は現在よりもかなり内陸まで入り込んでおり、海に突き出た半島や岬の部分に霊域があった。現在では洪積層と沖積層と区分される境目であり、ここには現在、寺社や古墳が残っているのだとする都市探訪記。

皇居が東京の中心であるのも、集落の中心に聖域を作り、死を厭わない縄文的な文化の結果であり、江戸城を造った東国武士は縄文狩猟文化の末裔であるから当然なのだそうである。

赤坂、麹町、芝、曙橋などの地域に東京タワーや放送局があるのも、異界への入口という点で、現代人も無意識に霊域の伝統を引き継いでいるのだとしている。

四谷怪談の於岩稲荷が、当初福徳の神様だったというのは初めて知ったことだ。鶴屋南北によって貶められてしまったらしい(笑)。

非常にスリリングで面白い東京ルポだが、あまり科学的ではなく、また、ちょっと対象に入れ込みすぎているというか、「トンデモ」の気配がなくもない。この人は宗教学者の看板を下ろしたが、どうも超自然の領域にとらわれる性向がありそうだ。アジールや無縁の考え方がやたらと引用されているのは、網野善彦が義理の叔父さんであるから当然か。