本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

SF・ファンタジー

四畳半タイムマシンブルース/森見登美彦

上田誠の戯曲「サマー・タイムマシン・ブルース」を原案に、物語世界を著者の「四畳半神話体系」の登場人物に当てはめて時間旅行のドタバタを描いたSF。 森見作品ではおなじみのおんぼろアパート下鴨幽水荘に暮らすのは、自分を常識的な人間だと考えているが…

保健室のアン・ウニョン先生/チョン・セラン

流行りの韓国文学の一冊で、軽いファンタジー。私立M高校に勤める養護教諭、アン・ウニョンは見えない存在が見える。そしておもちゃんの剣と銃をふりかざし、邪悪なものや高校生のエロエロ想念や悪い因縁などをぶった切っていくのである。 現れる現象は様々…

三体/劉慈欣

中国SFの話題作である。 冒頭、高名な物理学者が紅衛兵につるし上げられる場面で物語の幕が開く。学者の娘、葉文潔(イェウェンジェ)は父親が虐殺されるのを目の当たりにするし、反動分子の子弟として冷遇されることになってしまうが、天文物理学者としての…

ツナグ/辻村深月

死者に会いたいと願う者と死者の橋渡しをする使者(ツナグ)をモチーフとした連作。ファンタジーの括りになるだろうが、ミステリーとしての趣も十分で読み応えがある。 地味で冴えなくて引っ込み思案の女性が、街角で具合が悪くなっている自分を助けてくれた…

椿宿の辺りに/梨木香歩

海幸山幸伝説をモチーフにしたファンタジー。変な小説である(笑)。 主人公の佐田山幸彦は祖父に変わった名前を付けられた。因みに二才下の従妹は海幸比子で通称は海子。なぜが祖父がこのような名前を付けるに至ったのか、家の謎を辿る旅の模様を描いている…

鬼憑き十兵衛/大塚已愛

何とも血なまぐさい時代ホラーだが、妙にカタルシスのある快作。耽美的な文体が一昔前の時代小説を思わせる。 山人と里人の間に生まれた十兵衛は、親を知らないまま山人のなかで育つが、長じて里に出ると、熊本藩剣術指南役である剣の師匠から苛烈な修行をさ…

熱帯/森見登美彦

奇書を巡る思索と冒険の旅、という感じだろうか。 冒頭、著者と思しき人物が「熱帯」という書について語る。熱帯の島に流れ着いた青年を主人公としたもので、魔術やら謎の人物やら活劇やらが物語られている本だが、著者と思しき人物はこの本を紛失し、未読の…

虫のいどころ 人のいどころ/おのりえん 秋山あゆ子

シュールな昆虫漫画「虫けら様」が面白かった秋山あゆ子が作画を担当していると言うことで読んでみた。昆虫や自然が題材の児童向けファンタジーである。主人公のよりさんは、夫の転勤で自然の濃い田舎町に引っ越してきた四児(すべて男子)の母親で、濃すぎ…

ヒストリア/池上永一

沖縄の風土や伝承をモチーフに数々のファンタジーを発表してきた池上永一作品。今回も超弩級に仕上がっている。主人公の知花煉は沖縄戦で凄惨な状況の中を逃げ回り、何とか生き延びることが出来たが、その最中にマブイ(魂)を落としてしまう。沖縄の伝承で…

コンテクスト・オブ・ザ・デッド/羽田圭介

文庫化にて再掲、という名の使い回し・・・(笑)。 何とも奇想に満ちたゾンビ小説である。 10年前に文学賞を受賞してそのまま専業になり、最初は話題になったもののその後は鳴かず飛ばずの作家K(著者の分身ならんか)と、面会するのに自宅近くまで行かなく…

鹿の王(上・下)/上橋菜穂子

疫病パニックをモチーフにしたファンタジーであるが、一言では言い表せられない重厚長大な作品である。アカファ王国が東乎瑠(ツオル)帝国によって併呑され、独角(抵抗軍の戦士)の頭として戦っていたヴァンは、戦いの後、塩鉱山の奴隷に落とされている。…

伏 贋作・里見八犬伝/桜庭一樹

南総里見八犬伝をモチーフに、房総の山から出てきた猟師である少女浜路が、伏(ふせ)と呼ばれる犬人間とドタバタ追いかけっこを繰り広げる時代ファンタジーである。 伏は残虐な行為を平気で行い、江戸を恐怖に陥れている。猟師である祖父に育てられた浜路(…

かわうそ堀怪談見習い/柴崎友香

朝日の書評で採り上げられており、面白そうだったので読んでみたが、なんだか肩すかしの感(作品の善し悪しではなく、書評から受けるイメージとずいぶん違っていたので)。 http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2017050700011.html主人公は中堅の女性作…

かたづの!/中島京子 

文庫化にて再掲、という名の使い回しPart2。 かつては一本角(片角)のカモシカであり、今は八戸南部班の秘宝「かたづの様」として存在する精霊のような意識が、八戸南部藩を支え続けた女傑について語る時代ファンタジーとでも言うべきか。結構は歴史小説な…

冬虫夏草/梨木香歩

文庫化につき再掲(という名の使い回し(笑))。 亡くなった友人、高堂の生家に家守として暮らす主人公の出くわす怪異を、明治期の日本的情緒たっぷりに、かつユーモラスに描いた「家守綺譚」の続編である。「家守綺譚」では何しろ、亡くなった高堂が掛け軸…

コンテクスト・オブ・ザ・デッド/羽田圭介

何とも奇想に満ちたゾンビ小説である。 10年前に文学賞を受賞してそのまま専業になり、最初は話題になったもののその後は鳴かず飛ばずの作家K(著者の分身ならんか)と、Kを、面会するのに自宅近くまで行かなくてもいい作家とランク分けする大手出版社の若手…

獣の奏者/上橋菜穂子

国際的にも評価されている児童文学ファンタジーだが、どこが児童向けなのかと思わせるくらいの大作で、架空の獣を除けば堂々の大河架空歴史ロマンである。真王(ヨジェ)が神聖な権威として存在し、大公(アルハン)が闘蛇による武力で辺境の防衛を引き受け…

ほんとうの花を見せにきた/桜庭一樹

竹の精である吸血鬼をモチーフにした連作集で、どれも読ませるが、第一編の「ちいさな焦げた顔」が特に胸に迫る。犯罪うずまく都市に暮らす主人公は、何人目かの継父のおかげで豊かな暮らしをしていたが、継父の不祥事により組織の報復を受けて母と姉が惨殺…

はかぼんさん 空蝉風土記/さだまさし

そこそこに名前も顔も売れている物書きの遭遇する不思議を情緒的に描いた土俗ファンタジーとでも言うべき連作集。主人公は「まっさん」と呼ばれる有名人だし、実在の人物をモデルとした登場人物もいるし、半ばドキュメンタリーか私小説かと思ってしまうが(…

バベル九朔/万城目学

一代で様々な事業を成功させた祖父から母親が受け継いだ雑居ビル「バベル」の管理人に収まり、作家になろうと文学賞応募作を書き続けている主人公の巻き込まれる特異な体験を描いたSFであろうか。以前の作品はファンタジー色が強かったが、今回は堂々の異…

Borelo 世界でいちばん幸せな屋上/吉田音

クラフト・エヴィング商會の吉田夫妻の娘という体裁の主人公吉田音が、知り合いの作家志望の円田さんと結成したミルリトン探偵局シリーズ第二弾である(前作は[ミルリトン探偵局1http://d.hatena.ne.jp/suijun-hibisukusu/20161022/p1:title=夜に猫が身をひ…

夜に猫が身をひそめるところ/THINK  ミルリトン探偵局1/吉田音

作者も主人公もクラフト・エヴィング商會の吉田夫妻の娘という触れ込みだが、実際は夫妻の作品らしい。なんとも紛らわしい。吉田夫妻の娘である音(おん)は中学生という設定で、一家ぐるみで付き合いのある円田さんの飼い猫Thinkが妙なものを持ち帰ってくる…

黒猫の小夜曲(セレナーデ)/知念実希人

高次の霊的存在である「道案内」は死者の魂を「我が主様」のもとに送り届けることを任務としている。魂が素直に従えば良し、この世に未練を残していると「地縛霊」となってなかなか「我が主様」のもとへ行こうとしないので、それを説得するのも役目であるが…

有頂天家族 二代目の帰朝/森見登美彦

猫の日だから狸小説(笑)。 糺の森に巣くう狸一家、下鴨家の三男、矢三郎の巻き起こすドタバタをユーモラスに描く京都ファンタジー有頂天家族の第二弾。矢三郎の父は、かつて京都狸界の頭領「偽右衛門」を務めた大物で、面白きことは良きことなりをモットー…

東京ローカルサイキック/山本幸久 

山本幸久作品と来れば好人物たちがドタバタと一生懸命に汗を流し、最後にほんのりハッピーエンドという読後感の良い小説だから、のっけから超能力者が登場する本作も、異能を持ってしまったがために苦労する者がユーモラスに描かれているんだろうと思いきや…

図書館戦争/有川浩

図書館の自由を守るために戦う図書隊の活躍を描く近未来ポリティカル・フィクション。このベストセラーを今頃読んでいる(笑)。昭和の終わりに、権力による検閲を可能にするメディア良化法が成立。出版段階ではなく、流通してからの検閲であることから、図…

ゆんでめて/畠中恵

「病弱若旦那一太郎と愉快な妖たち」が活躍するしゃばけシリーズは、面白くはあるものの毎度毎度同じような物語の繰り返しでいい加減飽きが来ており、この数年は新作に手が伸びなかったが、図書館の棚にあったので手にとって見たらきちんと面白かった(笑)。…

ちょんまげぷりん/荒木源 

江戸時代から現代に侍がタイムスリップしてきて天才パティシエになっちゃったら、というドタバタSF。仕事と子育てに挟まれ、ストレスの多い日々を送っているシングルマザー遊佐ひろ子の前に、やつれきった侍の木島安兵衛が現れる。当初警戒心を露わにした…

聖なる怠け者の冒険/森見登美彦

かつて朝日新聞夕刊に連載されていた小説が単行本化にあたり全面改稿されたもの。親切な正義の味方ぽんぽこ仮面に追い回される善良な怠け者という構図は変わっていないが、連載当時、なにか全体に薄味で中途半端な印象だったので、期待と不安相半ばで読んで…

本にだって雄と雌があります/小田雅久仁

とんでもない奇書である。本好きなら、本棚にいつの間にか知らない本が増えているという経験を持つ人もあろうが、それは本には雄と雌があって繁殖しているからだというのが本書の肝で、生まれてきた子供本(幻書)にまつわる挿話の数々が滑稽に猥雑にそして…