本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ひとつ灯せ/宇江佐真理 

何だかよく分からない時代ホラーミステリーという感じである。

主人公の平野屋清兵衛は料理茶屋を営んでいるが、息子に店を渡して隠居した頃から徐々に衰弱し、あわやのところにまでに至るが、幼なじみの蝋燭問屋伊勢屋甚助が読経することで死に神を追い払ってくれる。甚助は人の死期を覚る力を持っているのだ。

甚助が、怪奇譚を披露することで自分たちの長寿を願う話の会に参加していることを知った清兵衛は自分も混ぜて貰うことに。菓子商、町奉行所例繰方同心、医者、儒者、一中節の師匠などが参加して不思議な体験を話し合うのだが、不思議に対して何か解決を見いだすのかと思えばそうでもなく、むしろ逆に登場人物が超常現象に囚われていく。

中には昔の押し込み事件を解決する宮部みゆきタッチの作品もあるが、ミステリーとしての合理性があるわけでもなく、何とも中途半端な印象だ。どうも宇江佐真理は作風を変化させたいのか、違う方向に行き始めているような気がする。