本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

祖母姫、ロンドンへ行く!/椹野道流

著者が祖母を連れてロンドン旅行をした経緯を軽妙に綴った旅エッセイである。スマホが登場しないから20年ほども前のことかもしれない。


身内の集まりで、かつてロンドンで暮らしたことのある著者が滞在のエピソードを語っているうちに高齢の祖母が「私もロンドンに行ってみたい」と言い出す。これを聞いた伯父たちが旅費を出してくることになり、祖母のお供としてのロンドン珍道中が始まるのだった。


高齢の祖母のため飛行機はファーストクラス、滞在は一流ホテルと言うことで、それぞれのホスピタリティが詳細に描かれ、一流のサービスとはこういうものかと思わせる。部屋付きのバトラーであるティムは、サービス精神はもちろん、心配り、著者に対する目配りや親密感など、ビジネスを超えたものを感じさせるのだ。


我がままでプライド高く、天衣無縫な祖母に振り回される描写も楽しいが、古風な女性の気骨も感じさせて、感じいる秘書孫である。旅の終わりのころ、著者の切ない願いを叶えるために奮闘するティムの行動も感動的で、ユーモラスかつしみじみとした旅エッセイであった。