著者は翻訳家・エッセイスト。家族をネタにしたエッセイが何冊かあり、身の回りの日常をWeb日記で発表したりしている。本作もWeb日記の連載から介護ネタを選りだしたもの。
琵琶湖沿岸で暮らす著者は、仕事と家庭(高校生の双子がいる)を両立させて頑張っているが、ある日、義母が「不良」と札を貼ったビールを持ち込んできたという。常にネタになるものを探し、好奇心あふれる著者はその瓶をを写真に残している。
義母は、料理人である義父を支え、茶道の教授をして来たしっかり者の主婦であり、それが故に若い頃は著者も辛い目に遭わされてきたらしい。しかし、認知症が明らかになり、言動が変化する義母に対しシスターフッドを感じ、ケアに奔走することになる。
対して義父である。Web連載で弊三郎とかサブちゃんとか、敬意の感じられない呼び方をすることもある著者だが、心配性でめそめそと鬱陶しい性格の、なかなかにキャラの立った爺さんなのだ。脳梗塞を患い、多少行動に難はあるが、かなりしっかりしており、その分だけ妻の変化を嘆くことに。
著者が義母のためにデイサービスを用意したり、訪問看護の人間が出入りするようになると、妻と離れたくないタイプの義父はこれらのケアスタッフに憎悪を抱いたりするのだ。こういう束縛も一種の愛情だろうか。義母の方もなかなか嫉妬妄想が強く、うーん、大変だなぁと思う。
新書の帯に「ホンネ100%!キレイごとゼロ!」とあり、その通り、かなり赤裸々に綴っている。ここでは書けないような苦労も多々あるんだろうなぁと、もっと軽微な介護を経験した者としては思うが、ユーモラスな文章なので切実な割にエンタメ感も充溢。
それにしても家族に物書きがいるとなんでもネタにされて大変だなと思ったことである(笑)。