本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

JK、インドで常識ぶっ壊される/熊谷はるか

私立中高一貫校に通い、高校への進学でキラキラJKライフを夢見ていた著者は、父の赴任によりインドで暮らすことに。インクレディブル・インディアに投げ出され、その混沌ぷりをつぶさに語っている。


本書についてはネットニュースに一節が掲載されていて、その観察眼と文章力がとても女子高生には思えないなぁと思って興味を持っていたら新聞の書評欄にも。世間でも認められているのかと思ったら、出版甲子園という大会の優勝作だそうで、なるほどという感じ。


様々なカルチャーギャップに直面し、混乱しつつもそれを的確な文章で表現しており、とても読ませる。ユーモラスな部分もあれば、現実に打ちのめされたりもあるが、とにかく自分なりにそれを受け止めている。ひとに仕えて貰うこと、貧困、ストリートチルドレン、スラムなど、日本にいる高校生なら顔を背けて見ぬふりをするだけではなかろうか。


コロナ禍に直面したインド生活の終わりは重苦しいが、興味深く読めたインド滞在記である。若者の外国体験記は「何でも見てやろう/小田実」「シスコで語ろう/高橋三千綱」などがあるが、基本的に欧米を向いていたのではなかろうか。本書は若者によるインド体験記という意味でも新鮮。出版甲子園の選評で、林真理子が「今までインドものを書くのはおじさんばかりだった」と発言しているそうで、確かに。