本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

美麗島紀行/乃南アサ

美麗島とは台湾のこと。台湾を訪ねながら、かの土地の歴史や風土を思索的に綴った紀行エッセイである。


台湾は、元々は中国の辺境であり、スペインやオランダが植民地にしようとしたことがあったり、日本の領土になったり、戦後は国民党が本土から逃げてきて支配したり、様々な歴史を背負った土地である。


日本統治時代を懐かしみ、戦後までは日本人として育ったと自認する高齢者がいたりするし、日本人土木技術者がダムを作ったことで豊かな土地となり、現在まで顕彰されているとか、撃墜された日本人パイロットが村落に飛行機を落とさなかったことで神として祀られていたり、圧政一方ではなかったような事実は初めて目にした。しかしながらやはり理不尽に占領していたという過去はぬぐえないだろうし、国民党政府が入ってきてやっぱり圧政を敷いたので、日本が懐かしまれたということもあるだろうか。


歴史や風土や人を対する思索を重ねながら旅する体裁は司馬遼太郎の「街道をゆく」シリーズを想起させた。続編もあるようなので読まなければ。