本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

本の本

貸本屋おせん/高瀬乃一

回りの貸本屋としてたくましく生きるおせんを主人公とする連作時代小説。 おせんの父親は腕利きの彫り師(本の原版となる版木を掘る職人)だったが、本がお上の目に止まり、版木は削られ指を折られる。失意のうちに母は出奔、父は自死することに。 そしてや…

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語/内田洋子

著者は通信社を経営しつつイタリア関係のエッセイを何冊も出しているらしい。文庫の新刊広告で「旅する本屋」に惹かれて読んでみたくなった。 ベネチアで、親切で知識該博な古書店を見つけた著者はその店で何かと買い求めるようになる。そして親しくなった店…

教室に並んだ背表紙/相沢沙呼

中学校の図書室をモチーフにした連作学園小説である。 登場人物は少しずつ重なっているが、必ず登場するのが学校司書のしおり先生。陽性で生徒思いでやや天然で子供っぽいキャラクターだ。 そして、しおり先生が、それぞれの篇の悩める主人公(カースト上位…

チャリング・クロス街84番地 増補版/ヘレーン・ハンフ

アメリカ人の女性作家がロンドンの古書店と文通を重ねた書簡集。ユーモラスで滋味豊かでほのぼのする。 ヘレーン・ハンフは古書を愛しており、様々な古書の注文を出すが、ユーモラスで時に我がまま気ままな感じもあってまことに楽しい。返信してくるフランク…

市場のことば、本の声/宇田智子

新刊書店勤務の異動で沖縄に移住し、退職後に那覇の市場で主に沖縄関係の古書を扱う古本屋を開いた著者が日常を綴るエッセイ集。お客とのやりとり、古本屋の日常、市場の人たちとの付き合い、沖縄に関する古書の話など、短文ながら滋味深い文章で楽しむこと…

プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年/アン・ウォームズリ

著者が受刑者のための読書会に携わった活動を記したノンフィクション。受刑者のプライバシーについては一部創作を加えているらしい。読書が受刑者の精神的成長に役立つと信じ、熱心に活動を展開する友人キャロル・フィンレーから活動への参加を誘われた著者…

本を愛しすぎた男 本泥棒と古書探偵と愛書狂/アリソン・フーヴァー・バーレット

歯科待合室の雑誌書評欄に出ていて気になった、いわゆる「本の本」である。最近立て続けに古書がらみの本を読んでいるなぁ(一年近く前の話だが)。本書は、高価な古書を違法な手段で入手する男と、何度かの犯罪から警察と連携して本泥棒を特定した全米古書…

本棚探偵の冒険/喜国雅彦 

書評欄で見かけた本で、それまで人気漫画家らしい著者のことは知らなかった。本棚探偵とは他人の本棚を覗き見るのが好きということみたいだが、むしろ古本フェチの異様な生態を面白おかしく描いた「本の本」である。江戸川乱歩や横溝正史の好きな本好き少年…