本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ルポ池袋 アンダーワールド/中村 淳彦 花房 観音

数十年前、板橋駅前の社宅団地に住んでいたことがあるので中高生の頃は池袋でよく遊んだ。それなりに開けた街だが何となくいかがわしくて、東京のはずれという場末感もあり、そこがまた魅力な街だったと思う。


そういう点から本書に興味を持ったが、そこに描かれるアンダーワールドは「何となくいかがわしい」どころではなく、大いに猥雑で危険な様相だった。片やAV関係などのライター、片や官能小説家だからそこはもうどっぷりと濃くドロドロした世界である。


性風俗店、ストリップ、AVなどのアダルト産業関係者、立ちんぼ(街娼)など、性にまつわる世界も描かれるし、ラブホテルでの殺人事件や通り魔殺人、車の暴走事故などで死者が出るなど、巻き込まれて命を奪われることの多い街でもある。


そして首切り役人山田浅右衛門の墓や追いはぎなどの被害にあった死者を供養する四面塔や戦犯が処刑された東京プリズン跡地のサンシャイン60もあったりして、死の匂いが濃厚に漂う街なのでもあった。


余談だが、親戚の家が池袋駅徒歩圏内にあり、すぐ近所に殺人事件があったそうで、親戚宅も規制線が張られたとか。悪趣味な叔父が「ここに死体があったんだ」とわざわざ教えてくれた。


性と死に縁取られた魔都池袋のただれた魅力を伝えてくれる好ルポである。