本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

完全版 猪飼野少年愚連隊 奴らが哭く前に/黄民基(ファン・ミンギ)

大阪、猪飼野を舞台に、在日コリアンの不良少年たちの来し方を回想する昭和30年代グラフィティである。


現在こそコリアンタウンとして賑わう鶴橋界隈だが、当時は貧民窟のような場所だったらしい。在日コリアンが多く住み、暮らしは豊かではなく、粗暴少年が多かったようだがその行動は生き生きとしている。


当初は喧嘩三昧ぐらいだったのが、やがて愚連隊の子分となり、いろいろな悪事に手を染め、最後は本職のヤクザとの抗争で潰されるまでを、当時の社会状況、警察の資料などを引用しながら活写する。そしてこの時期を境に街は清潔に無臭となってきており、当時を懐かしむ筆致である。 


自分が生まれたのが昭和30年代だから、この時期の記憶はなく、ノスタルジーを抱くにはちと年代違い。住環境も違うし、共感は持たないが、生き生きとした不良少年達は面白く読める。


成長してのちのことも語られて、失踪した者、自殺した者、医師になった者などの後日談も切ない。