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新宿をつくった男 戦後闇市の王・尾津喜之助と昭和裏面史/フリート横田

戦後の新宿で一時期隆盛を誇った闇市、尾津マーケットのボスである尾津喜之助を描いた評伝ノンフィクションで。


元は不良少年、任侠と神農(香具師、露天商)の世界に関わり、正業に就いたりしたものの結局香具師一家の杯を貰う。そして、持ち前の行動力、商才で頭角を現していく。


荒廃した戦後の新宿で、がれきを片付け、簡単な小屋がけの露店を並べ、闇市を主宰する。そして、滞留している物資を買い上げ、元兵隊や戦争未亡人などを雇って売らせることで、一種まともな経済活動を展開するのである(あくまで一時的なものではあるが)。


貫禄があり、目端が利いて、商才に長け、義侠心も厚く、しかし暴力を背景にした闇の部分も併せ持ち、なかなかに複雑な人物ぶりが興味深い。


官許を得て開いた尾津マーケットも、元々地主のいた土地なので明け渡しを求められ、その際に闇の方が顔を出したりして収監されたりもする。なかなかに毀誉褒貶の激しい人なのだ。


戦後の一時期に光を放ったあだ花って感じもあるが、痛快な人物像ではある。ただまぁ、ヤクザな面は、小市民としては受け入れがたいかな。


中世の流浪民の末裔みたいな感じで、香具師、露天商、テキヤと呼ばれる商売にはなんか惹かれるものがある。周縁の世界に関心があるし。因みに博徒暴力団)は逮捕されたときに無職とされるが、自分たちは露天商とされるという、香具師の言辞をどこかで見たことがあるが、プライドがあるのだろうか。ただ、昨今は博徒香具師の境目が曖昧な感じがする。