本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

テヘランのすてきな女/金井真紀

イラストレーター・文筆家である著者がテヘランで出会った女性たちを活写する紀行画文エッセイ。


厳格な戒律に縛られた男尊女卑社会で、女性はヘジャブやチャドルを身に纏わなければならず、さぞや小さくなって暮らしているのだろうと思いきや、結構たくましく生きている人たちがいて蒙を啓かれた気分だ。


スカーフをしていなかったために警察に連行され三日後に死亡した女性がいて、それに反対するデモで数百人の死者が出たなんてこともあり、抑圧された社会に思われるが、スカーフの取り締まりにしても以前ほどは厳しくないらしい。


女性の人権のために戦う女性弁護士、差別されるアフガン移民子弟のために学校を運営している女性、全身を覆ったユニフォームで行われる女子サッカーのコーチ、性的マイノリティなど、生き生きと活躍する女性は枚挙にいとまがない。


もちろん窮屈な社会であることは確かで、若い人ほど海外移住したがっているということもあるらしい。


二人の通訳の描写はユーモラスだし、たくましく生きる人々とイスラム社会を描いた好エッセイである。