本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ

イギリスのブライトンに暮らす著者(保育士でエッセイやルポのライター)が、アイルランド人と日本人の混血である息子をモチーフに、イギリスの教育や格差や差別や分断をユーモラスに描いた家族エッセイ。ベストセラーが文庫化されたので読んでみたらかなり面白かった。


イギリスでは学校が公的に格付けされているらしい。元々はエリートなカトリック校に通っていたが息子だが、中学進学を機に、カトリック校ではなく、元底辺校へ(校長の努力で底辺校から中程度にレベルアップした由。学校見学で母親の方が面白さを感じている)。


公営住宅地域にあり、どちらかと言えば下層階級の地域になるのか、人種差別や格差など、様々な問題を抱えつつも息子は元気に通学する。イギリスの教育は日本に比べるとかなり独特の感があり、エンパシー(他人について思いを巡らせることが出来る能力)や市民教育など、小さな大人として大している感がある。個や多様性を重視している。比べて日本では全生徒を等質に扱っているんだろうなと思われた。


保守党政権下では公的サービスが縮小しており、教師が自腹を切って貧しい子にものを与えているとか、どこの国も貧困問題は付いて回る。


タイトルの通り、自分のアイデンティティに悩んだりもする息子だが、基本的には明るくて賢明で思慮深い子供である。母ちゃんの方はロック好きで結構ぶっ飛んでおり、親子の関係も面白い。


本書を読んで思い出したのが椎名誠岳物語」である。教育書として捉えられるのを否定し、自分の息子の面白さを綴った親馬鹿私小説であると公言していたように記憶しているが、子供社会の面白さを描いて似たようなものを感じさせた。

 

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2/ブレイディみかこ

息子は13才になり、ちょっと親離れ。言葉が通じないのに心が通じすぎている祖父と孫のやり取りがしんみりさせる。貧乏暮らしをせざるを得ない移民、成功した移民との格差など、現代英国社会のありようもリアル。


庭の花 咲き分けの椿

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