本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

俳句

フルーツポンチ村上健志の俳句修行/村上健志

短歌や俳句のバラエティで活躍する村上健志が様々な句会にゲスト参加した記録である。著述は主に編集者が行っている模様。著者の俳句はわりと叙情的で、更に発見があり、詩情を漂わすのが上手い人だと思う。 句作はしないが、鑑賞はそこそこに面白いので本書…

俳句、はじめました 吟行修行の巻/岸本葉子

エッセイストである著者は俳句を趣味としているが、見たものを即座に詠まなければならぬ吟行を苦手としており、吟行句会に参加させて貰って修行した記録の俳句エッセイ。 行った先は新宿御苑や東大駒場キャンパス(著者の母校)やら靖国神社やら。 正直なと…

神戸・続神戸/西東三鬼

前衛俳句の旗手、西東三鬼が、新興俳句運動が特高によって弾圧された「京大俳句事件」で一時東京を逃れ、神戸で暮らした顛末を描いた私小説と言うべき物か。 著者はトーアロードに面した安ホテルに逗留し続けるが、住人にはエジプト人、白系ロシア人、中国人…

ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石/伊集院静 

文庫化にて再掲(使い回しとも言う(笑))。 副題にある通り、子規と漱石の交友を中心に、子規の青春から死までを描いた評伝小説である。ノボさんとは、子規の本名正岡升(のぼる)から取られた子規の愛称で、年上に一目置かれ、年下から慕われる、気持ちの…

稲村ヶ崎夕景1&今日の独り言

十日ほどの前の稲村ヶ崎にて。江ノ島と富士の夕景が眺められる稲村ヶ崎は人気の撮影スポットである。この日も三脚カメラマン(うざい)からスマホまで、様々な写真愛好者(夕陽愛好者?)が集まっていた。強烈に寒い日ではあったが、美しい夕景を堪能。紅い…

震災句集 関揺れる/御中虫

茨城在住の俳人・関悦史さんは昨年の震災で家が壊れるなどの被災をされたが、ツイッターで関さんと交遊のある御中虫さん(おなかむし=凄い俳号だ(笑))が、「震災句集/長谷川櫂」に反発し、ツイッターにて一晩で書き上げた連作125句が「関揺れる」である…

放浪行乞 山頭火百二十句/金子兜太

俳人金子兜太が、放浪の自由律俳人種田山頭火の人生の足跡と共に作句の鑑賞を記したもの。山頭火は、「分け入っても分け入っても青い山」「うしろ姿のしぐれてゆくか」等、特にファンでもない自分でもなんとなく代表句を知っているくらいに巷間有名な放浪者…

俳句、はじめました/岸本葉子 

人気エッセイストによる俳句入門記。初心者にしては卒なく作っているように見えるが、句会で指摘される誤謬や、初学者のやりそうな失敗や焦燥感をユーモラスに綴っていて楽しい。写生が重視される俳句において、兼題(そのときのテーマとして出題される季語…

俳人漱石/坪内稔典 

小説家として名を成す前、正岡子規の友人兼弟子として秀句を残した夏目漱石の句作を肴に、ネンテン先生と漱石・子規が語り合う架空鼎談である。明治時代の書生言葉として語り合う二人が面白く、そこにネンテン先生が自説を開陳する訳だが、やっぱりすべては…

車谷長吉句集/車谷長吉 

著者が俳句に秀でていることは知っていたが、ほとんど目にする機会はなかった。しかし、数年前に剽窃(と言うより類句類想のレベルであろう)騒ぎを起こした末の弁明が収録されているようなので興味が湧いた。人間の業や闇を描くのが著者の小説の作風であり…

漱石俳句集/坪内稔典 編

夏目漱石は正岡子規の親友であり、子規が近代俳句確立に奮闘しているとき、自分も熱心に句作に励んでいたが、ロンドン留学中に子規が亡くなり、その後小説に移行したようだ。自分は漱石俳句の抒情性とほんのり味わいのある諧謔性(俳諧味)が好きだ。以前か…

芭蕉めざめる/光田和伸

松尾芭蕉幕府隠密説を真面目に考えている芭蕉研究者はいない(らしい)。しかし、芭蕉研究者を自認する著者がこれを真面目に検証しているのが本書である。おそらく芭蕉の生涯が謎に満ちているためこのような仮想学説が登場したのだろう。著者は現在までに確…

俳風三麗花/三田完

そろそろきなくさい匂いが漂い始めている満州事変ころの東京を舞台に、中堅俳人 秋野暮愁の句会に集う三人の女性の句作や恋や描いた句会小説。ちゑ(大学教授の娘)、壽子(医専学生)、松太郎(浅草芸者)の三人の描き分けが面白く、戦前の女性らしい雰囲気…

全然色気のない女性俳人?(笑)

僕はどんな夢を抱かなかったかは院生俳人(一部的には有名)のブログだが、野の蝶をみな懐中にかくしけり 宇多喜代子というエントリーに下記のような一節がある。 宇多さんの俳句の印象として、 女性俳句史のうえに位置づけたとき、 「全然色気のない女性」…

俳句原理主義者

一昨日、NHK−BS「ニッポン全国俳句日和」の終わりだけを見た。以前にはファックスで寄せられる俳句を有名俳人の選者がその場で採り上げていく番組だったが、今回から模様替えしたようで、選者も、小澤実、片山由美子、星野高士、櫂未知子、夏井いつき、…

紅梅や・・・

よく利用する図書館は私鉄沿線の住宅街にあり、山林を開発したような地域なので多少の畑が残っている。実梅を採るための白梅林の中に二本だけピンク色の梅が植えてあるが、白梅はまだ一分咲きくらいなのにピンクの方は今が満開だ。こんな景色で思い出すのは…

情けないクリスマス大賞

クリスマスの日である。子供の頃はは12月25日が盛り上がる日だったと記憶しているのだが、いつの間にやらクリスマスイブがお祭りの日になっているような気がする。覚え違いだろうか・・・。クリスマスも季語であるから、数多の俳句が詠まれているだろう…

添削

三月の甘納豆のうふふふふ 桜散るあなたも河馬になりなさい 坪内稔典氏は現代俳句を代表する一人で、上記のようなとぼけた味わいの口語俳句を得意としておられます(とぼけているだけではなく、かなりぶっ飛んでいることも魅力です)。つぼうちとしのりが正…

霾普段はお目にかからないような漢字ですが、「霾」または「霾る」で、つちふ(る)と読みます。昨今何かと話題の黄砂のことです。霾は季語になっていまして、季節の情緒という感じで使われていますが、健康被害をもたらすなど、今時は迷惑この上ないようで…

丑三つの厨のバナナ曲るなり/坊城俊樹

著者は高浜虚子の血を引く俳人で、俳誌「花鳥」編集長である。俳句の保守本流にいながら、風雅な花鳥諷詠のみを教条的に主張する俳壇に懐疑的な目を向けているのが面白い。著作名になっている句自体かなり奇をてらった感があるが、気分は出ているし楽しい。…