本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

海神の島/池上永一

著者お得意の沖縄ファンタジー。「テンペスト」「シャングリラ」のような重厚なものも読ませるが、「風車祭」的な軽みのある雰囲気も好きで、本書は後者のタイプ。


一代で財を築いた傑物の漣おばぁを慕う孫の三姉妹にある遺言を残す。漣おばぁの父親の遺したお宝を見つけた者に米軍基地内に残る廟所の祭祀権を相続させるというもので、そんなもの要らないと思った少女時代の孫娘たちだが、実は膨大な借地料の絡む物件であり、長じた三姉妹はドタバタのお宝争奪戦に乗り出すのだった。


長女の汀(なぎさ)は小学生のころ舞踏に秀で色香もたっぷり、長じては銀座のクラブの経営者として成功している。次女の泉は行動力溢れる水中考古学者で、探索先で必ず発見があることから「レディーシャーク」の異名をとっている。三女の澪は美貌に秀でるが幼稚な地下アイドルで、変態を招き寄せる妙な魅力を持っている。三者ともそれぞれ相続額に匹敵する巨額の資金を必要としており、お互いをライバルとして虚々実々の駆け引きを展開し、奮闘。


反目する三姉妹だが、そこにはやはり姉妹愛もあって最後はしんみりさせる。沖縄の通俗的な反基地闘争への批判的視線が感じられるあたり、著者の複雑な思いもありそうだが、アクションあり、歴史ありで痛快な物語だ。