本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ツナグ/辻村深月

死者に会いたいと願う者と死者の橋渡しをする使者(ツナグ)をモチーフとした連作。ファンタジーの括りになるだろうが、ミステリーとしての趣も十分で読み応えがある。


地味で冴えなくて引っ込み思案の女性が、街角で具合が悪くなっている自分を助けてくれた芸能人(キャバ嬢あがりのタレントで、歯に衣着せぬ言動で人気があったが急死))に会いたいとか、傲慢で尊大な田舎者の中年男が母親に会いたいとか、親友に主役を取られた、自分が中心にいないと気が済まない演劇少女とか、キャラ立て筋立てが実に上手い。


ツナグとして現れるのは妙な落ち着きを見せる男子高校生だが、この高校生自身にまつわる謎解きも鮮やか。読み応えのある一冊だった。続編も出ているらしい。

ツナグ(新潮文庫)

ツナグ(新潮文庫)