本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

三体/劉慈欣

中国SFの話題作である。


冒頭、高名な物理学者が紅衛兵につるし上げられる場面で物語の幕が開く。学者の娘、葉文潔(イェウェンジェ)は父親が虐殺されるのを目の当たりにするし、反動分子の子弟として冷遇されることになってしまうが、天文物理学者としての能力を買われ、国家の秘密プロジェクトに(軟禁同然)で参加させられることになる。


一方、時が過ぎて現在。ナノテクノロジーの第一人者、汪淼(ワンミャオ)は科学フロンティアなる団体への参加を誘われており、多国籍からなる軍事・警察のチームから情報収集のために科学フロンティアに参加して欲しいと要請されるが、視界にカウントダウンが表示されるという異常な事態に抑圧され、混乱する。


そして無礼で不作法でタフな警官、史強(シー・ツァン)に悩まされるつつ、それでも、汪淼は謎の真相に近づくため、三体というバーチャルゲームにログインしてみるのだ。幾つもの文明の興亡が展開されるゲームの世界観の複雑で難解なことがこの物語の大きな魅力だ。


そして葉文潔の追想などから、異星の文明(三体世界)とのコンタクトが明らかにされる。三体世界との攻防が次作以降(三部作とか)の読みどころ。


科学的な記述の多い難解なハードSFであるが、エンタメな物語としての面白さも兼ね備えており、本国では言うに及ばず、英訳版がアメリカで話題になったことも分かるというものだ。地球を手玉に取る三体世界に対し、地球人類はどのように対抗できるのか。

三体

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