本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

失われたものたちの本/ジョン・コナリー

ナチスが勃興し脅威を感じているイギリスを舞台に、孤独な少年が異世界で成長していくホラーファンタジー


主人公のデイヴィッドは母親が病死して悲しくて堪らない。しかし、父親はすぐに再婚相手を見つけ、弟も生まれてしまい、デイヴィッドは孤独な悲しみにひたっており、本から聞こえる声に耳を傾けたり、発作を起こして失神したりするように。そして、暮らしている屋敷の庭にナチスの軍用機が墜落した衝撃で異世界に飛ばされてしまうのだった。


そこは、赤ずきんと狼との間にうまれたループ(人間の知性と狼の残虐性を併せ持つ)が世界を支配しようと企み、七人の小人は傲慢な白雪姫に顎で使われ、人間の首と動物の体をつなぎ合わせて狩るのが趣味と言うサイコな女狩人がいるような異様な世界だ。そして、デイヴィッドにまとわりつくねじくれ男が不気味な影を落とすが、威勢が衰えている王の持つ「失われたものたち本」に元の世界へ戻る方法が書かれていると知ったデイヴィッドは、苦難の冒険を経ながら王城を目指すのだった。 


悪夢のような状況がこれでもかという感じに描写され、正直なところ読むのがしんどい部分もあるし、ねじくれ男がデイヴィッドにまとわりつく理由も相当に気持ち悪いが、やっぱり面白さに満ちており、結構ボリュームのある本ながら最後まで飽きさせなかった。少年の成長と克己が頼もしい。