本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

四畳半タイムマシンブルース/森見登美彦

上田誠の戯曲「サマー・タイムマシン・ブルース」を原案に、物語世界を著者の「四畳半神話体系」の登場人物に当てはめて時間旅行のドタバタを描いたSF。


森見作品ではおなじみのおんぼろアパート下鴨幽水荘に暮らすのは、自分を常識的な人間だと考えているが自意識過剰気味の主人公、主人公とは運命の黒い糸で結ばれていると言う、他人の不幸で飯が三杯食える小津、このアパートに何年暮らしているか不明な樋口清太郎など。


映画撮影に下鴨幽水荘が使われた時のいざこざでたった一台しかない冷房のリモコンが壊れ、主人公はパニックに。そこへ未来の学生がモッサリと現れたので、これ幸いとばかりに過去へスリップしてリモコンを取ってこようとするも・・・、とドタバタが展開される。


不条理と諧謔(と言うよりドタバタ?)が著者の魅力だが、最近の「夜行」「熱帯」などは不条理に重きが置かれていたので、本作では久々に森見ワールドを楽しめた。黒髪の乙女の絡む追跡劇が笑える(笑)。