本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

児童文学・ヤングアダルトノベル・少年少女小説

ぼくとテスの秘密の七日間/アンナ・ウォルツ

オランダの児童文学。 両親と兄のヨーレとリゾートのテッセル島にバカンスに来たサミュエルは10才の少年。賢いが頭でっかちで、妙な質問を発しては家族を辟易させたりしている。2才上の兄はテストの成績が悪く、喧嘩ばかりしている兄弟だ。 ある日、ひとつ年…

星の王子さま/サン=テグジュペリ

知人が本書や著者の熱烈なファンで、どんなものやらと子供の時以来数十年ぶりに再読してみたら、なんとも素敵な物語だった。 砂漠に不時着したパイロットがどこかの星から旅してきた王子さまと出会う。王子さまは賢くて純粋であどけなくて可愛らしい。子供ら…

この川の向こうに君がいる/濱野京子

震災をモチーフにしたヤングアダルト小説。 東日本大震災で兄を失い、家を流された梨乃は埼玉に移住している。中学で過剰な同情を買い、頑なになった梨乃は都内の私立校に進学、中学の時は震災で諦めた吹奏楽部へ入部するが、己の出自は明らかにしない。 同…

だれもが知ってる小さな国/有川浩

佐藤さとるの名作、コロボックルシリーズへのオマージュ。著者が原典のシリーズのファンであったろうことが随所に読み取れる。養蜂業(はち屋)を営む家の息子ヒコは花の時期によって移動する生活を続けており、短期間での転校を繰り返しているが、ある年、…

The MANZAI/あさのあつこ

主人公の瀬田歩は、事故で父親と姉を亡くし、母の郷里に二人で戻ってきた中学生である。普通でいなければいけないと思い込み、しかし普通でいられないことのプレッシャーで不登校になったことがあり、それが事故の遠因になっているという悲しみを背負った少…

アナザー修学旅行/有沢佳映

様々な事情で修学旅行に行けなくなり、登校している中三数人の三日間を描いたYA小説。 語り手の三浦佐和子は骨折で不参加。児童養護施設から登校しているため不参加の小田はお調子者で軽薄だがいい笑顔で女子にもてる。インテリヤクザの異名を持つ片瀬は冷笑…

ともしびをかかげて/ローズマリ・サトクリフ

ローマン・ブリテン四部作の三冊目。ローマ帝国の威勢が衰え、海のオオカミと呼ばれるサクソン人が侵略が激しくなり、ついにローマ軍がブリテンから撤退を開始する。 ブリテンの住人にはローマ人もいればケルト人もいるが、十人隊長のアクイラはローマ文明の…

銀の枝/ローズマリ・サトクリフ

ローマン・ブリテン四部作の第二作。「第九軍団のワシ」のマーカスの子孫が登場する。ブリテンを統治するカロウシウス帝のもとで下級医師となったジャスティンは、百人隊長のフラビウスと意気投合し、彼等が遠縁に当たることが分かって更に親密となる。ある…

帰還 ゲド戦記4/アーシュラ・K・ル=グウィン

評価の高いゲド戦記シリーズの第四巻。第二巻でゲドに救出されたテナーは平凡な農家の後家になっており、悪党どもに虐待され殺されかけた子供を引き取り、育てている。一時自分を保護してくれた大魔法使いオジオンの死に立ち会う過程でゲドと再会するが、魔…

第九軍団のワシ/ローズマリ・サトクリフ

ローマ帝国時代のブリテンを舞台にしたローマン・ブリテン四部作の第一巻。この作家は児童文学という括りらしいが、なかなかどうして本格的なローマ史時代冒険小説である。時代は2000年ほど前のことであろうか。新任の百人隊長としてブリテンに赴任したマー…

シロクマ号となぞの鳥/アーサー・ランサム

ランサム・サーガ(全12巻)のシリーズ最終篇。キャプテン・フリント、ツバメ号、アマゾン号、ドロシアとデビットのDきょうだい一行は、キャプテン・フリントが友人から借りた帆船シロクマ号で外ヘブリデス諸島を航海し、帰途に就いたところでとある島へ立ち…

スカラブ号の夏休み(上・下)/アーサー・ランサム

ランサム・サーガ11作目。デビットとドロシアのDきょうだいは、親にヨットを仕立てて貰い、アマゾン号、ツバメ号一行との夏休みを楽しみにしてベックフットへ。ブラケット姉妹の母親は転地療養に出かけており、姉のナンシイが一家の主人として万事取り仕切り…

女海賊の島(上・下)/アーサー・ランサム

船を愛する子供たちの冒険を描く「ランサム・サーガ」シリーズ10作目。ツバメ号クルーとアマゾン海賊とキャプテン・フリントが、スクーナーのヤマネコ号で世界一周の航海中という設定だから、これは「ヤマネコ号の冒険」同様、作中に更に描かれたフィクシ…

六人の探偵たち/アーサー・ランサム

今回はオオバンクラブ物語の続編になり、トム、ジョーとピートとビルのデサンドグローリ(死と栄光)号三人組+ドロシアとディックのDきょうだいが、三人組にかけられた嫌疑を晴らすべく奮闘する。オオバンクラブの周辺で、船が流される事件が頻発。そばにデ…

ひみつの海(上・下)/アーサー・ランサム

ランサム・サーガの八作目。ウォーカー家の5きょうだいは両親と一緒にハリッジ近郊の湿地でキャンプの予定であったが、父親が海軍の仕事で急遽呼び出されることに。子供たちはキャンプを台なしにされたと海軍大臣をけなすのであった(笑)。しかし、父親の…

ふしぎな目をした男の子/佐藤さとる

コロボックルシリーズの中で本作だけ未読だった。登場するのは、つむじ曲がりでツムジイと呼ばれる老コロボックルと、人間の目には届かぬはずのコロボックルの動きを見てしまうタケル少年。せいたかさんとの関わりから徐々に人間社会に対して接点を持ち始め…

海へ出るつもりじゃなかった/アーサー・ランサム

ランサム・サーガのシリーズ第7弾。今回はウォーカー家の4きょうだいが本格的な航海をする。海外赴任から戻ってくる父親(海軍軍人)を出迎えにハリッジに滞在している4きょうだいは、川を遡上してくる小さな帆船(エンジンもある)ゴブリン号の手助けをし…

ツバメ号の伝書バト/アーサー・ランサム

今回、ツバメ号・アマゾン号・Dきょうだいの面々は金鉱開発に乗り出す。ハイトップスあたりで金が出たことがあるという噂があり、色めき立つ面々は、ハイトップスの麓にキャンプを張り、せっせと地面を掘り返すのだった。今回もキャンプの設営などが楽しく語…

オオバンクラブ物語/アーサー・ランサム

今回はツバメ号クルーもアマゾン号クルーも登場せず、ディックとドロシアのDきょうだいと新たな友人たちが主役である。Dきょうだいは母親の恩師ミセス・バルバラから「借りたヨットで一緒に休暇を過ごさないか」という誘いを受け、喜んで出かけていく。湖水…

長い冬休み/アーサー・ランサム

ヨットやスクーナーで子供たちが活発に遊ぶランサム・サーガの第三弾は、氷結した湖を舞台にスケートや橇での探検が描かれており、ツバメ号のウォーカー4きょうだい、アマゾン海賊のブラケット姉妹に加えて、今度はディックとドロシアのカラムきょうだい(D…

ヤマネコ号の冒険(上・下)/アーサー・ランサム

ツバメ号とアマゾン号の子供たちが船に乗って野外を楽しむランサム・サーガシリーズの第三弾談。今回はヤマネコ号というスクーナーで外洋航海の旅に出る。キャプテン・フリントが用意したスクーナー「ヤマネコ号」は、ウォーカー4きょうだいとアマゾン号姉…

飛ぶ教室/エーリヒ・ケストナー 池内紀訳

子供の頃からの愛読書であり、物語は馴染みのものだが、池内訳があったのは知らなかったので早速読んでみた。舞台は戦前ドイツの寄宿学校で、10才を一年生として9年生までが在籍している。そこで繰り広げられる友情や克己や悲しみを描いたクリスマスの物語は…

ツバメの谷/アーサー・ランサム

前作「ツバメ号とアマゾン号」から1年、再び湖水地方の避暑地にやってきたウォーカー家の四きょうだいと、好敵手でもあり同盟者でもあるアマゾン海賊(と名乗る)ブラケット姉妹との楽しい夏休みを描いた、ランサム・サーガ第二作。どちらのきょうだいも共に…

ツバメ号とアマゾン号/アーサー・ランサム

自然豊かな湖水地方を舞台に、ウォーカー家の四きょうだいの夏の冒険を楽しく描いたイギリスの名作児童文学シリーズ「ランサム・サーガ」の第一冊目である。リオだのアマゾンだのと言った名称が出てくるので南米が舞台なのかと思ったが、湖に子供らが勝手な…

だれも知らない小さな国/佐藤さとる

コロボックル小国シリーズの第一巻。子供の頃からの愛読書で、何年かに一度読み返す名作児童文学である。 主人公は子供の頃、自然豊かな野山で自分だけの遊び場所を見つける。居心地の良い秘密基地としていたところ、知り合いの農家のおばあさんから、そこは…

わんぱく天国/佐藤さとる

小五の頃在学していた長野市の小学校の図書館でよく借りた愛読書だった。東京に越してから本屋で見つけたと思い、買ってきたのが佐藤春夫の「わんぱく時代」で、間違えていてがっかりしたが、佐藤春夫のわんぱくも面白い(笑)。本書は著者少年時代の遊びや…

楽隊のうさぎ/中沢けい

中学に上がったばかりの克久は小学校時代に仲間はずれにされていた経験があり、心を壁で塗り固めている少年だが、おどおどしつつも時折臆病な好奇心が顔を覗かせることがあり、それが「うさぎ」と表現されている。中学でもいじめっ子の相田守(暴力ではなく…

岬のマヨイガ/柏葉幸子

マイミクさんのレビューが面白そうだったので読んでみた。東北の震災と遠野物語をモチーフにした児童向けファンタジーである。マヨイガとは、昔話に出てくる不思議な家のこと。DV亭主から逃げ出してきたゆりえは、親戚に引き取られる途中らしき萌花という子…

香港の甘い豆腐/大島真寿美

シングルマザーに育てられている高3の彩美は、世の中に対し「ここはどこ?」と言ったような違和感を持ち続けており、不登校にもなりかけている。常に父親がいないことを言い訳にしてきていて、不登校の件で母と言い合いになった際もそれを持ち出したところ、…

かさねちゃんにきいてみな/有沢佳映

元FMヨコハマのアナウンサーで、番組内でブックレビューコーナーをお持ちの北村浩子女史が何度か推しているのを目にして読んでみた児童文学である。 http://blog.fmyokohama.jp/books/2013/07/post-04a5.html (↑音声で聞けます)本書はほとんどが秋から冬に…