本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

だれも知らない小さな国/佐藤さとる

コロボックル小国シリーズの第一巻。子供の頃からの愛読書で、何年かに一度読み返す名作児童文学である。
 
主人公は子供の頃、自然豊かな野山で自分だけの遊び場所を見つける。居心地の良い秘密基地としていたところ、知り合いの農家のおばあさんから、そこは不思議な小人の住む山で、大事にしないとバチが当たると教えられ、主人公にとっては更に宝ものような場所になるのだが、戦争をはさんで離れた街に住むことになり、成長するうちにいつしか忘れてしまう。戦後の生活苦の中、ふと小山のことを思い出し、懐かしい場所を訪ねてみると、そこは昔と変わらず存在しており、更に不思議な小人たちとの邂逅もあり、物語は大きく動き出すのだった。

自然豊かな野山を自分だけの基地にするシーンや、知り合いになった小人との交友も楽しいし、小山に住めるようにするため徐々に整備していく過程、やはり小山の不思議を経験していた女性と知り合っていく様子など、すべてがほのぼのと懐かしい思いに収斂される。物語すべてがこれでもかとノスタルジーを主張している感じだ(笑)。

今回の読後でちょっと引っかかる部分。小山を通る自動車道路の計画が持ち上がり、接収されそうになると、コロボックルを使い地権者や役人に夢を見させて計画を変えさせようとするシーンがある。小山を守るための戦いと捉え、今までは特に問題を感じなかったのだが、自分のエゴを通すため、ひとの心に働きかけたりするのは傲慢ではないかとやや疑問を持つ。まぁでも、相変わらず面白かった。このシリーズは続編が数冊出ているのでこれも読んでしまおう。