本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

帰還 ゲド戦記4/アーシュラ・K・ル=グウィン

評価の高いゲド戦記シリーズの第四巻。第二巻でゲドに救出されたテナーは平凡な農家の後家になっており、悪党どもに虐待され殺されかけた子供を引き取り、育てている。一時自分を保護してくれた大魔法使いオジオンの死に立ち会う過程でゲドと再会するが、魔法の力を失っているゲドは無力な男であり、テナーとの会話もかみ合わない。

魔法使いの出てくるファンタジーというと辛い苦難もすべて魔法で解決、みたいなイメージがあるが、本書にはそういうところはなく、男尊女卑や女性差別や幼児虐待などの問題が随所で語られており、ファンタジーカタルシスはほとんどない。その点でおそらくファンタジーとしては異色であり、かつ評価が高いんだろうなぁと思いながら読み進めたら、最後の場面で突如魔法の力ですべて解決みたいな場面が出てきてやや肩すかしの感。ただ、そこに至るまでのまでの重たいテーマは読み応えがあった。

第五巻「アースシーの風」の評価があまり高いように感じられなかったのはこういう切実感が薄れたんだろうか。それでもとりあえず読んでみねばなるまい。