本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

翻訳文学

ぼくとテスの秘密の七日間/アンナ・ウォルツ

オランダの児童文学。 両親と兄のヨーレとリゾートのテッセル島にバカンスに来たサミュエルは10才の少年。賢いが頭でっかちで、妙な質問を発しては家族を辟易させたりしている。2才上の兄はテストの成績が悪く、喧嘩ばかりしている兄弟だ。 ある日、ひとつ年…

アーモンド/ソン・ウォンピョン

韓国のヤングアダルト小説である。 主人公のソン・ユンジェはシングルマザーの母と、母に対して常に批判的で口やかましい祖母との三人暮らし。つつましくもそれなりに穏やかな家族だが、ユンジェには感情がないと言う障害があった。どんな経験をしても感情が…

星の王子さま/サン=テグジュペリ

知人が本書や著者の熱烈なファンで、どんなものやらと子供の時以来数十年ぶりに再読してみたら、なんとも素敵な物語だった。 砂漠に不時着したパイロットがどこかの星から旅してきた王子さまと出会う。王子さまは賢くて純粋であどけなくて可愛らしい。子供ら…

屋上で会いましょう/チョン・セラン

「フィフティ・ピープル」「保健室のアン・ウニョン先生」が話題のチョン・セランの短編集。ホラーあり、文学性の高い作品あり、エンタメありと、この作家の多才さが堪能できる。 suijun-hibisukusu.hatenablog.comsuijun-hibisukusu.hatenablog.com 表題作…

ボートの三人男 もちろん犬も/ジェローム・K・ジェローム

イギリスの有名なユーモア小説で、子供の頃は児童文学全集で読んで笑い転げ、長じてからは丸谷才一訳の中公文庫版を楽しんできたが、光文社古典新訳文庫で出ていたので読んでみた。物語は、やや生活に疲れた三人の若者が気分転換にテムズ川をボートで旅する…

第九軍団のワシ/ローズマリ・サトクリフ

ローマ帝国時代のブリテンを舞台にしたローマン・ブリテン四部作の第一巻。この作家は児童文学という括りらしいが、なかなかどうして本格的なローマ史時代冒険小説である。時代は2000年ほど前のことであろうか。新任の百人隊長としてブリテンに赴任したマー…

飛ぶ教室/エーリヒ・ケストナー 池内紀訳

子供の頃からの愛読書であり、物語は馴染みのものだが、池内訳があったのは知らなかったので早速読んでみた。舞台は戦前ドイツの寄宿学校で、10才を一年生として9年生までが在籍している。そこで繰り広げられる友情や克己や悲しみを描いたクリスマスの物語は…

続あしながおじさん/ジーン・ウェブスター

子供の頃から何度も再読しているが、新潮文庫から新訳が出たので久々に読んでみた。前作「あしながおじさん」の主人公ジュディ・アボットは富豪と結婚し、自分が育った孤児院ジョン・グリア・ホームを大学のルームメイトで親友のサリー・マクブライド(裕福…

あしながおじさん/ジーン・ウェブスター(光文社古典新訳文庫)

孤児院で育ったジュディ・アボットが、篤志家の援助で大学に進み、匿名の篤志家に対し手紙を出し続けるという、言わずと知れた書簡体小説の名作だが、光文社古典新訳文庫に入っていたので読んでみた。このシリーズではケストナーの「飛ぶ教室」新訳が良くな…

書店主フィクリーのものがたり/ガブリエル・ゼヴィン

リゾートと思しきアリス島で書店を営むフィクリーは偏屈な変人である。妻の故郷に夫婦で書店を開いたが、妊娠中だった妻が事故死。消沈し陰鬱に生きているが、ある日、いずれは売却して老後資金にしようと考えていた稀覯本が盗まれ、さらにはに二歳の女児マ…

ペンギンの憂鬱/アンドレイ・クルコフ

ウクライナ人作家がロシア語で書いた小説である。本好きSNSの友人が紹介していて読んでみたくなった。主人公のヴィクトルは売れないジャーナリスト兼小説家で、動物園でリストラされたペンギンと暮らしている。このペンギンが憂鬱症を患っているというなかな…

わたしたちが孤児だった頃/カズオ・イシグロ

主人公のクリストファー・パンクスは1930年代の上海租界に育ち、貿易会社勤務の父、反アヘン運動に熱心な母のもとに過ごしていたが、突如両親が失踪、イギリスの叔母のもとに引き取られる。長じて私立探偵となったクリストファーは数々の難事件を解決し、混…

ろんどん怪盗伝/野尻抱影

みすず書房「大人の本棚シリーズ」の一冊。数度の脱獄に成功し、ロンドン子からやんやの喝采を浴びた若き盗賊ジャック・シェバードの痛快な活躍を描いた西洋時代小説とも言うべきか。野尻抱影が「ジャック・シャパード/エインズワス(原文ママ)」を抄訳翻…

バルザックと小さな中国のお針子/ダイ・シージェ 

文革時代の下放政策を経験したフランス在住中国人映画監督が、自分の経験を織り込みながらユーモラスに描く青春小説。フランス語で書かれたものらしい。主人公は医師の息子で、友人の羅(ルオ・機転の利くはしこい少年))は歯科医師の息子である。エリート…

即興詩人/アンデルセン 文語訳/森鴎外 口語訳/安野光雅

子供のころ、児童向けの翻訳を何度も再読したものだが、長じてからは岩波文庫の森鴎外訳か大畑末吉訳しか選択肢がなく、どちらも読む気にならなかった。美文の文語体で綴られる鴎外訳はそれだけでもう一個の作品と思われるくらいに美しい日本語らしいが、と…

やんごとなき読者/アラン・ベネット 

英女王陛下が活字中毒者になっちゃったら、という設定のユーモア翻訳小説。バッキンガム宮殿へやってきている移動図書館に偶然に遭遇した女王は、借りなくては悪いかなと言う義務感から自室へ本を持ち帰る。ひとつの趣味に偏って没頭してはならないという不…

リンさんの小さな子/フィリップ・クローデル 

本好きの交流SNS本カフェhttp://heartgraffiti.sns.fc2.com/にて紹介されていた本。リンさんは、どことは明示されていないがベトナムらしき国から小さな赤ん坊を連れてフランスに上陸した難民である。息子夫婦は戦争で殺され、自分も絶望しきっているが、赤…