本・花・鳥(ほん・か・どり)

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長い冬休み/アーサー・ランサム

ヨットやスクーナーで子供たちが活発に遊ぶランサム・サーガの第三弾は、氷結した湖を舞台にスケートや橇での探検が描かれており、ツバメ号のウォーカー4きょうだい、アマゾン海賊のブラケット姉妹に加えて、今度はディックとドロシアのカラムきょうだい(Dきょうだい)が仲間になり、(架空の)北極を目指す。

母親のナースであったディクソンおばさんの農場に預けられているカラムきょうだいはティティやロジャと同じくらいの年少組で、物語を想像するのが得意なドロシア、天文yや鉱物などの自然科学にマニアックな関心を持ち、一旦のめり込むと身勝手なまでに周囲のことを考えなくなるディックと、なかなかに個性的なきょうだいである。

楽しそうに遊ぶツバメ号・アマゾン号メンバーを羨んでいたDきょうだいは、信号をやり取りすることで仲間に。やや頭でっかちのDきょうだいは新たな友人達に野外での遊び方を仕込まれることになる。

短い冬休みの間に湖が完全氷結するのを待っている子供達だが、あと数日というところになってもなかなか氷結しない。せっかくの北極探検も計画だけで終わることになりそうだと思っていたところが、ナンシイがおたふく風邪にかかり、一緒に遊んでいた子供達も一ヶ月間登校禁止で、長い冬休みを持つことに。

いつも楽しいことを思い付くナンシイは不在だが、医師を介して通信し、キャプテン・フリントのハウスボートに入り込み、楽しい時間を過ごす。そしてナンシイの病も癒え、キャプテン・フリントも帰還して、いよいよ北極探検である。子供の冒険のなんと危険で楽しそうなことよ。ディックは昨今で言えばやや発達障害の気味があるかと思えるが、90年も前の物語に何とも魅力的なキャラを持ってきたものだ。

解説の野上暁氏が長野の寒中休みのことを書いていてちょっと懐かしい(子供の頃、一年半だけ長野市で過ごしたことがあるので)。