本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ツバメ号とアマゾン号/アーサー・ランサム

自然豊かな湖水地方を舞台に、ウォーカー家の四きょうだいの夏の冒険を楽しく描いたイギリスの名作児童文学シリーズ「ランサム・サーガ」の第一冊目である。リオだのアマゾンだのと言った名称が出てくるので南米が舞台なのかと思ったが、湖に子供らが勝手な呼称を付けていたものだった。

きょうだいの父親は遠地に赴任している軍人で、母親と五人の子供(一人はまだ幼児)が湖水地方に避暑に来ており、上の子供たちは湖の島でのキャンプを計画するというのが物語の発端。そして、アマゾン海賊(と名乗る姉妹。良家の子女のようだがかなりお転婆)と知り合ったり、小さな冒険を重ねたりして、楽しい夏を過ごすのだった。

冒険中、ロビンソン・クルーソーなどに自分たちをなぞらえている子供たちは、母親や地元の人間を原住民だの未開人だのと呼んでいるが(今時、政治的に正しくないと思うが、1930年ではこれは問題にならなかったのだろう。と言うより、日本での出版でも問題にならない時代だったんだろうな)。楽しい冒険の最中に母親が現れたりして突如日常が割り込んでくるあたりがユーモラス。ある意味、安全という紐付きの冒険でもあるあたりが子供たちにはちょっとほろ苦い。しっかり者の二人(ジョンとスーザン)と、やんちゃな下の二人(ティティとロジャ)の性格付けがなされているのも、西洋家庭小説のパターンというべきか。

面白かったので続編も楽しみだ(全12部(24冊))。