本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

銀の枝/ローズマリ・サトクリフ

ローマン・ブリテン四部作の第二作。「第九軍団のワシ」のマーカスの子孫が登場する。

ブリテンを統治するカロウシウス帝のもとで下級医師となったジャスティンは、百人隊長のフラビウスと意気投合し、彼等が遠縁に当たることが分かって更に親密となる。

ある日、皇帝の側近アレクトスが敵対勢力と手を結んで裏切ろうとしていることを知った二人は皇帝に知らせるが、アレクトスに上手くあしらわれ、遠ざけられる羽目に。更に赴任地でアレクトスの裏切りを知って逃亡、抵抗組織として戦うことになるのだった。

時代小説を読んでいるような面白さは相変わらずで、謀反を知って遁走し、主君の敵を討つべく奔走する時代物と似たような感じ。

サクソン人などを野蛮人としている書きっぷりは、ローマ文明をイングランド人の精神的な祖先と考えているからではないかという解説があったが、ローマの血を受けながらブリテンで生まれ育った若者たちには故郷に対する複雑な思いがあるように感じられる。

ローマ帝国の威勢が衰え始めた時代は、夷狄との戦いに頭を悩ませた中華文明も思わせ、西洋史を舞台にしていると言えど、ここでも何やら近いものに感じられた。