本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ともしびをかかげて/ローズマリ・サトクリフ

ローマン・ブリテン四部作の三冊目。ローマ帝国の威勢が衰え、海のオオカミと呼ばれるサクソン人が侵略が激しくなり、ついにローマ軍がブリテンから撤退を開始する。


ブリテンの住人にはローマ人もいればケルト人もいるが、十人隊長のアクイラはローマ文明の一員とは言えブリテンで育っていて、アクイラにとってはブリテンが故郷であり、サクソン人に蹂躙されるのが我慢出来ず、軍を脱走して故郷に戻る。しかしサクソン人の襲撃により父を殺され、愛していた妹は連れ去られ、自分はサクソン人の奴隷となるのだった。


その後、軛を脱したアクイラはローマの衣鉢を継ぐアンプロシウスの勢力に身を投じ、サクソンとの戦いに明け暮れるが、妹を失った心の傷は大きく、狷介な人間になってしまう。そこからどのように回復していくかも読みどころ。


ローマ人、ブリトン人、サクソン人などが複雑に入り交じるブリテンの歴史を背景に、波瀾万丈の物語である。