様々な事情で修学旅行に行けなくなり、登校している中三数人の三日間を描いたYA小説。
語り手の三浦佐和子は骨折で不参加。児童養護施設から登校しているため不参加の小田はお調子者で軽薄だがいい笑顔で女子にもてる。インテリヤクザの異名を持つ片瀬は冷笑的なひねくれ者だが、頭が良く、兄二人が本格ヤンキーだったため絡まれることが多く喧嘩が強い。小田と同じ施設から通っている野宮さん(優しい女子)、そこそこに人気のある子役女優の岸本さんはオタクに付きまとわれそうで修学旅行不参加。謎の美少女転校生湯川さんはなんで不参加だったんだろう(笑)。
とまぁ、なかなかに個性的な面々が、よそよそしく同じ教室で自習を始めるが、そこに事件が起こったりして、束の間の友情が醸し出される。
10年ほど前の作品だが、やはり今時の中学生らしく、キャラとか人間関係の立ち位置とかに気を遣っているのが読み取れる。あまり踏み込みすぎず、かと言って冷淡でもなく、この空気感は案外心地良いが、最終場面で「私たちは今も多分友達じゃない」と締めくくるあたりがややほろ苦く味わい深い。心因性嘔吐症で保健室登校している秋吉が、妙にやる気のある臨時養護教諭に嫌気が差して教室の仲間に混ざり、幾らか交流出来るようになって来たことにホッとする。
- 作者: 有沢佳映,ヤマダ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/09/07
- メディア: 文庫
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