本・花・鳥(ほん・か・どり)

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ツバメの谷/アーサー・ランサム

前作「ツバメ号とアマゾン号」から1年、再び湖水地方の避暑地にやってきたウォーカー家の四きょうだいと、好敵手でもあり同盟者でもあるアマゾン海賊(と名乗る)ブラケット姉妹との楽しい夏休みを描いた、ランサム・サーガ第二作。

どちらのきょうだいも共にヨット乗りである。船長(キャプテン)ジョン、航海士(メイト))スーザン、AB船員(エイブルシーマン)ティティ、ボーイのロジャの四人は、ナンシィとペギィのアマゾン海賊との再会を楽しみにしていたが、ブラケット家には厳しく口やかましい大おばがいて、なかなか外に出して貰えない。そして船長ジョンはツバメ号を岩に衝突させて沈没させてしまい、どちらも意気消沈の夏の始まりである。

しかし、陸上にステキなキャンプ地を見つけて「ツバメの谷」と名付け、大おばがいなくなる日、そしてツバメ号が復活する日を待ちわびながら陸のキャンプ生活を送ることに・・・。

自分たちで基地を設営していく子供たちの野外活動が詳細に綴られて、アウトドア小説として何とも面白い。セーリングの場面も詳細だ。冷静になろうとしながらたまに失敗するジョン、料理と整理整頓に能力を発揮するスーザン、想像力がありすぎてやや危なげなティティ、無邪気で活発で好奇心旺盛なロジャと、きょうだいの描き分けに生彩があり、一年間の成長も感じさせる。上の二人はローティーン、下の二人は小学校低学年くらいだろうか。

ブラケット家の姉妹もなかなかで、本当は良家の子女らしいが、活発で野蛮で頭の回るナンシィと、姉に引きずり回されているペギィの組み合わせが楽しい。

子供たちのちょっとした冒険を描き、自分も自然豊かな湖水地方で遊んでいるような気分にさせてくれる佳作である(実はキャンプもバーベキューも経験がないんだけど)。