本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

星の王子さま/サン=テグジュペリ

知人が本書や著者の熱烈なファンで、どんなものやらと子供の時以来数十年ぶりに再読してみたら、なんとも素敵な物語だった。


砂漠に不時着したパイロットがどこかの星から旅してきた王子さまと出会う。王子さまは賢くて純粋であどけなくて可愛らしい。子供らしい倫理観で、旅してきた星の俗物な大人たちを糾弾したり、知り合った生き物と友情を結んだり、このあたりの描写がなんとも微笑ましいし、パイロットとの会話も楽しい。


「大切なことは目に見えない」とか「(こどもたちが汽車の窓に顔を押しつけて外を見ていることに対し)こどもたちだけが、なにをさがしているか、わかっているんだね」「星々が美しいのは、ここからは見えない花が、どこかで一輪咲いているからだね・・・・」等、知恵に満ちた素敵な台詞が並んでいる。


星に帰るために最後は死んでしまう王子さまが悲しいけれど、切なく美しい物語である。余談だが、切なさとユーモアと寓話性で、村上春樹の初期作品の雰囲気が本書にやや似ていると思ったことであった。