本・花・鳥(ほん・か・どり)

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だれもが知ってる小さな国/有川浩

佐藤さとるの名作、コロボックルシリーズへのオマージュ。著者が原典のシリーズのファンであったろうことが随所に読み取れる。

養蜂業(はち屋)を営む家の息子ヒコは花の時期によって移動する生活を続けており、短期間での転校を繰り返しているが、ある年、やはりはち屋の娘であるヒメと同級になる。まぁ淡い初恋が展開されるのだろうなぁと思ったが、概ねは子供同士の交流が描かれている。

ある日、ヒコのもとにコロボックルが訪れるが、友達になってやってもいいという感じで、原典のコロボックルの純真さとはだいぶ違う感(笑)。ハイタッチもするし、ギャクギレなんて言葉も使うあたりが現代的で面白い。

原典をなぞっているのが男っぽい言葉遣いのマサ先生(原典「だれも知らない小さな国」のおちび先生が勤める幼稚園の園長先生っぽい)と、ヒコとヒメが仲良くなった、知的障害を持つ純粋無垢な青年ミノルさんに持ち上がった騒動だろう。ミノルさんの従兄が面倒を持ち込むが、原典同様良かったなぁと言う終わり方をする。

コロボックルの世界を現代に置き換えて原典ファンとしても楽しめる内容だった。村上勉氏のイラストも懐かしい。思えば原典シリーズ「だれも知らない小さな国」を初めて読んだのは45年も前だが、その間、読み継がれて来ているんだなぁ。

だれもが知ってる小さな国

だれもが知ってる小さな国