主人公の瀬田歩は、事故で父親と姉を亡くし、母の郷里に二人で戻ってきた中学生である。普通でいなければいけないと思い込み、しかし普通でいられないことのプレッシャーで不登校になったことがあり、それが事故の遠因になっているという悲しみを背負った少年だが、全体の基調は明るい。
転校先で大柄な秋本貴史に呼び出され、「つきおうてくれ」と言われた歩は交際を申し込まれたと思ってあたふたするというのが幕開け。これは一緒に漫才をやろうという誘いであったが。
明るくたくましく、やや無神経にも見えるような秋本だが、結構な細やかさをもっているところが面白い。生まれの複雑さも印影を与えている。そういう複雑さを持つ同級生が他にもいて、明るく楽しいだけの児童文学では終わっていない。
結局、文化祭の出し物で漫才版ロミオとジュリエットを演じることになった二人だが、横やりを入れる校長らの描き方がちょっと画一的に思えた。
- 作者: あさのあつこ
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2010/03/01
- メディア: 単行本
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