本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ふしぎな目をした男の子/佐藤さとる

コロボックルシリーズの中で本作だけ未読だった。登場するのは、つむじ曲がりでツムジイと呼ばれる老コロボックルと、人間の目には届かぬはずのコロボックルの動きを見てしまうタケル少年。

せいたかさんとの関わりから徐々に人間社会に対して接点を持ち始めたコロボックル社会が面白くないツムジイは、コロボックル小国を出て勝手に街中で暮らし始めるが、自分を目で捉えてしまう少年を見つけ、ともだちになってしまう。へそ曲がりの老人と少年のやり取りが微笑ましい。

ツムジイは古文書を研究する学者でもあり、人間との関わりも発掘したりもしている。タケルの遊び場であった田んぼやため池が開発によって破壊されそうになるが、かつてコロボックルが作った用水であることを見つけたのもツムジイであった。

本作にはせいたかさん一家は登場せず、どちらかと言えばタケル少年を中心に物語が進む。要は他の佐藤作品同様に、開発によって壊されていく豊かな自然を嘆いている感だが、それもコロボックルと人間の(隠れた)協働によって食い止められたというところか。

コロボックルシリーズは残すところ一冊。