本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

2006-01-01から1年間の記事一覧

失踪日記/吾妻ひでお 

カルトな人気のあった漫画家が、仕事に行き詰まって二度のホームレス生活を送った日々を綴る実録マンガエッセイ。プライドもなく拾い物をして生活していたかと思うと、手配師にガス工事の下請け会社に送り込まれ、いつの間にかその道のプロになったりしてい…

石の猿/ジェフリー・ディーヴァー

元ニューヨーク市警科学捜査部長である四肢麻痺患者、リンカーン・ライムが活躍するシリーズの第四弾。ライムは有能な鑑識捜査官だったが、現場の事故で脊髄損傷し、ほとんど体の動かない状態。狷介で取っつきにくい男であるが、優秀な頭脳と悪を憎む心を有…

アラビアの夜の種族/古川日出男

古川日出男のSF大賞受賞作。二段組み569ページ、へとへとになる大冊だ(笑)。物語は三重になっている複雑な構造で、冒頭、この本はエジプトの伝説の英訳版をテキストに著者が和訳したものであるという前書きがあるが、恐らくここからが創作なんだろう。…

文学刑事サーズデイ・ネクスト1 ジェイン・エアを探せ!/ジャスパー・フォード

クリミア戦争が130年以上続いているバーチャルなイギリスを舞台にしたSFミステリで、文学刑事局の女性捜査官が主人公。主人公が所属するスペックオプス(特別捜査機関、略称SO)の中には、時間警備隊、吸血鬼・狼人間処分局などと並んで文学刑事局が…

街の灯/北村薫

戦前の東京を舞台にした連作ミステリで、富裕な家の活発なお嬢様探偵が活躍する。お嬢様付きの運転手として新たに雇われたのは武術の達人かつ妙齢の美女の別宮(べっく)という女性で、お嬢様の読んでいた小説の主人公に因んでベッキーさんと呼ばれることに…

瀬戸内の民俗誌/沖浦和光

瀬戸内海の海民の子孫である著者が、古代より卑賤視されてきた海民の歴史と実情を語る。家船を始め、隆慶一郎の諸作に登場するような「道々の輩」とも重なる非定住民の世界は、とても歴史的なロマンをかき立てられる。農耕のできないような狭い土地で漁をし…

黄金旅風/飯嶋和一

鎖国前後の長崎で、長崎奉行の不正と戦う代官の活躍を描いた時代小説。傲岸、強欲な貿易商である父親に疎まれた末、不肖者と呼ばれ、勘当同然に自堕落な生活をしていた末次平左衛門だが、実は視野の広い高潔な人柄で、商人としても優秀であることを一部の者…

らくご小僧/立川志らく

落語と映画が大好きだった少年が、いかにして立川談志の門を叩くことになったかまでを描いた成長記で、章のタイトルに落語の演目や登場人物を配し、コミカルかつノスタルジックに来し方を語っている。世間の規範からはずれた両親、キレやすい爆発山田少年、…

虹の家のアリス/加納朋子

不思議の国のアリスになぞらえた謎解きミステリー「螺旋階段のアリス」続編。早期退職して探偵行を始めた仁木と、彼のもとにふいに現れた不思議な美少女との活躍を描いて好調だ。駒子シリーズの「スペース」を読んだ時にも感じたが、この作家、「優しさ」だ…

虎の城/火坂雅志

若い頃から何人もの主に仕え、豊臣恩顧の大名でありながら関ヶ原で東軍についたために、変節漢、裏切り者などの風評がある藤堂高虎を肯定的に描いた歴史小説。高虎の他、斎藤道三、松永久秀、細川幽斎など、実力で成り上がり、或いは自分の能力を一番最適な…

退屈姫君海を渡る/米村圭伍

新潮文庫オリジナルです。「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」の直系の続編であり、後の作品では大きく変貌を遂げている連中が初期のままで登場しているのがなんとも嬉しゅうございます。四国の小藩風見藩に嫁いだめだか姫は、前作では田沼意次と対決して活躍した…

海賊モア船長の遍歴/多島斗志之

18世紀初頭のインド洋のあたりを舞台にした海賊小説である。一風変わった時代小説とも言えるだろうか。東インド会社の航海士だったジェームズ・モアは、会社からあらぬ疑いを掛けられ職を失い、新婚の妻が変死して投獄され(後に嫌疑不十分で釈放)、失意…

笑う茶碗/南伸坊

PR誌に連載された4頁程度のエッセイをまとめたものらしい。深夜に散歩して近所の古い建築を勝手に世界遺産と名付けたり、蓮の開く族を聴くために野宿したり、大晦日に行われる王子の狐のパレードを見物に行って狐になりたがったりと、好奇心たっぷりな夫…

鷹姫さま/諸田玲子

お鳥見女房シリーズの第三弾です。主人公の珠世は、お鳥見役という幕府の下級役人矢島伴之助の妻ですが、お鳥見役の任務で他藩への密偵に出かけた夫を心配しつつ、しっかり留守宅を守り、家族の面倒を見ています。そこへ子だくさんの居候が転がり込んだかと…

古九谷浪漫 華麗なる吉田屋展

古九谷浪漫 華麗なる吉田屋展が銀座松屋で開催されている。NHKの新日曜美術館でこの内容を採り上げていて、焼き物好きなので、興味深く番組を見た。九谷に「吉田屋」風というデザインがあることは知っていた。黄色や緑や青を大胆に使ったダイナミックな絵柄…

薄紅天女/荻原規子

日本神話や古代史をモチーフに健気な少年少女を描くファンタジーシリーズ、勾玉三部作(「空色勾玉」「白鳥異伝」)の掉尾。平安時代、坂東の竹芝を治める長の息子及びその甥で、同年の藤太(とうた)と阿高(あたか)は、精神的に強く結びついたおり、二連…

2005年度ベスト

わたし的2005年度ベストです。2005年に出版された本ではなく、私が2005年に読んだ本ということでご了承下さい。下線部はamazon.co.jpへリンクしています。ボーナス・トラック/越谷オサム 日本ファンタージー・ノベル大賞優秀賞受賞作。 ひき逃げ事…