本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

らくご小僧/立川志らく

落語と映画が大好きだった少年が、いかにして立川談志の門を叩くことになったかまでを描いた成長記で、章のタイトルに落語の演目や登場人物を配し、コミカルかつノスタルジックに来し方を語っている。

世間の規範からはずれた両親、キレやすい爆発山田少年、ガキ大将の座を追われた駄菓子少年、出っ歯昇少年などの変てこりんな友人などは、かなり奇天烈に思えるが、どこにでも誰にでもある話を、面白くおかしく語ってみせられるのが落語家の芸という物なのでだろう。身の回りを振り返れば、やはり自分にも個性的な友人がいたような気がして来る。

ちりんちりんと三輪車のベルを鳴らしてやってくる知的障害のコーちゃんとの友情と別れとか、つばを吐きかける得意技を持つ幼児に仕返しする話とか、どの話もコミカルだったり切なかったり、軽妙でかつじっくりと読ませる。