本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

2005年度ベスト

わたし的2005年度ベストです。2005年に出版された本ではなく、私が2005年に読んだ本ということでご了承下さい。下線部はamazon.co.jpへリンクしています。

ボーナス・トラック/越谷オサム
日本ファンタージー・ノベル大賞優秀賞受賞作。
ひき逃げ事故に行き合わせてしまった草野のもとに陽気な幽霊が現れて、奇妙な同居生活が始まります。剽軽でお調子者の幽霊ですが、実体のない悲しみ、幽霊に絡む様々なエピソードなどがよく描かれ、コミカルで切ない、ハートウォーミングなファンタジーでした。
ボーナス・トラック


夜のピクニック恩田陸
一昼夜歩き続ける学校の行事、歩行祭を舞台に、高校生たちの葛藤や自問や成長を描いた青春小説。「六番目の小夜子」や「ネバーランド」同様、青春のとまどいに少しだけホラーな風味をプラスして、感動のある青春小説になっています。
夜のピクニック


スカーレット・ウィザード(全5巻)
凄腕の快男児である宇宙海賊が、財閥の跡取り娘(美貌の女傑)に、便宜上の結婚相手としてスカウトされ契約結婚をします。非常識かつ痛快な夫婦がとんでもない戦いを展開するSF活劇。
スカーレット・ウィザード〈1〉


カーマロカ 将門異聞 /三雲岳斗
藤原秀郷に討伐されたはずの将門が生存していた。将門を追い、さまざまな勢力が信濃を舞台に壮絶な戦いを仕掛けます。東国自治を夢見た快男児の必死のサバイバルを描く、バーチャルな平安時代小説。
カーマロカ―将門異聞


レヴォリューションNO.3/金城一紀
三流私立校のおバカな高校生たちが、温厚で生徒思いの生物教師の「勉強が得意ではない遺伝子を持つ君たちと、エリートの遺伝子を混ぜ合わせて新たな遺伝子を創造してみたらどうだ」という励ましに発奮し、区内の超エリートお嬢様高校の文化祭への侵入を企てます。健気で痛快なバカたちが楽しい、青春小説の快作でした。
レヴォリューション No.3


アースダイバー/中沢新一
縄文海進期と現代の聖地をつなぐ、スリリングでややトンデモな(笑)東京ルポです。
アースダイバー


サウスバウンド/奥田英朗
元過激派で現在はアナーキストを標榜する無茶苦茶な父親を持ってしまったために苦労している二郎少年の、ユーモラスな楽園小説。第一部東京編は、からみ続ける不良少年をどう凌いでいくかが見せ場です。第二部はパラダイス沖縄編ですが、やはりこの父親がいるとただではすみませんなぁ・・・(笑)。
サウス・バウンド


香港の甘い豆腐/大島真寿美
シングルマザーに育てられた主人公(ダラダラ女子高生)が、いつものように父親がいないことで口答えすると、パスポートとチケットを渡され、有無を言わさず香港へ連れて行かれます。無愛想な親切・無関心なホスピタリティ溢れる香港に、臆病で好奇心たっぷりの街の猫のごとくに馴染んでいく主人公が楽しいヤングアダルトノベルでした。
香港の甘い豆腐


ぎぶそん/伊藤たかみ 
中学生のガクは、ガンズ&ローゼスのコピーがしたさに、ギターテクとギブソンフライングVを持つ同級生かけるをスカウトし、バンドを組みます。一筋縄ではいかないたかみとマロ(ベース)の確執や、紅一点のりりいのガクへの思いなど、爽やかで微笑ましいヤングアダルトノベル。雰囲気的に「ビート・キッズ/風野潮」に似ているような気もしますが、「ビート・キッズ」ほど家族の比重が大きくありません。
ぎぶそん


埋み火  Fire’s Out/日明恩 
「鎮火報  Fire’s Out」続編。地方公務員として楽して得するために消防士になったと公言している大山雄大のキャラが痛快な青春ハードボイルド。老人の失火事故が続き、状況が似ていることに疑問を持った雄大が、徐々に謎の核心にたどり着きます。さまざまな親子関係が描かれ、やや切ないものがありますが、特に雄大と母・民子の会話がなかなかしんみりさせて快うございました。。
埋み火―Fire’s Out


君たちに明日はない垣根涼介
リストラ請負会社の担当者として企業でリストラ面接をしている青年を主人公に、さまざまな人生模様が描かれるユーモラスなリストラ小説。「ワイルド・ソウル」の冒険アクションの世界から一転して、普通の人々の生活を描いていますが、そこはそれ「ワイルド・ソウル」同様、こってりとした男女関係なども描かれています(笑)。やや厳しい始まりから「良かったなぁ」と思えるようなエンディングに至る、痛快な企業小説でした。
君たちに明日はない


笑酔亭梅寿謎解噺(しょうすいていばいじゅなぞときばなし)/田中啓文
不良少年が、更正のために落語家に弟子入りさせられますが、その世界で様々な事件が起こり、不良が事件を解決しつつ、師匠に花を持たせます(笑)。酔いどれで破天荒で弟子思いの師匠が痛快ですが、六代目笑福亭松鶴のキャラそのままでした。ミステリーというより青春小説としておすすめです。この後に「タイガー&ドラゴン」が当たり、落語ブームなども起きましたが、少し早すぎたようで、ブームに乗れなかったのが残念でした。
笑酔亭梅寿謎解噺