本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

児童文学・ヤングアダルトノベル・少年少女小説

闇の守り人/上橋菜穂子 

中世的な世界において、凄腕の短槍使いである女用心棒バルサの活躍を描く児童ファンタジー「守り人シリーズ」の第二弾である。(第一作は精霊の守り人)バルサの父カルナは、カルバン王国で王の主治医を務める名医であったが、王弟ログサムの王位簒奪の陰謀…

ほどけるとける/大島真寿美

高校中退の中途半端な日々からの成長を描くYA小説。学校で浮き上がってしまい、いたたまれなくなって高校を中退した美和は、パン屋やレストランやキャバクラのアルバイトを経つつもやはり長続きがせず、祖父の経営する風呂屋大和湯の手伝いをしている。美…

あねチャリ/川西蘭

引きこもりの女子高生が自転車と出会い、立ち直り、女子ケイリン選手として成長する姿を描く自転車青春小説である。早坂凛は、中学時代はバレーボールチームの中心選手で、バレーボール強豪校に進学するが、負傷によりバレーボールをあきらめた末に引きこも…

ジーンズ・フォーエバー/アン・ブラッシェアーズ 

四度目の夏を迎えた少女たちは進路がバラバラになり、更には妊娠や不倫といった性の問題などが出てきて、成長したんだなぁと思わせるが、少女の性心理の濃密な描写にはやや辟易する。本作も、大人になる苦しみと、少女たちの絆を、ユーモラスかつ切なく描い…

ラスト・サマー/アン・ブラッシェアーズ 

不思議なジーンズと仲良し四人組を巡る三度目の夏の物語。母親と二人きりの生活に慣れきっていたカルメンは、母親が再婚し、妊娠したことで自分の居場所がなくなると悲観し、またもひねくれた行動に出てしまう。駄々っ子カルメンの本領発揮だ(笑)。ティビ…

セカンド・サマー/アン・ブラッシェアーズ

仲良し四人組の誰にでも似合ってしまう魔法のジーンズが旅する二度目の夏は、それぞれの娘たちと母との対決編である。両親が離婚し、シングルマザーの母に育てられてきたカルメンは、母親に恋人が出来、毎日うきうき過ごしているのが我慢ならず、子供じみた…

トラベリング・パンツ/アン・ブラッシェアーズ

母親たちが同じ妊婦向けエアロビクス教室に通っていたため、同じ時期に生まれ、生まれたときから親友である、カルメン、レーナ、ブリジット、ティビーのひと夏の成長を、切なく、ほろ苦く、ユーモラスに描いたYA青春小説である。カルメンが古着で手に入れた…

園芸少年/魚住直子

よんどころなく園芸部に入部してしまった三人の男子高校生を描く青春小説。進学校に入学した篠崎達也は、昼休みに一人でまったりできる場所を見つけ、和んでいると、絵に描いたような不良ファッションのコワモテ大和田一平と遭遇する。大和田ものんびり過ご…

精霊の守り人/上橋菜穂子

大ヒットした児童向けファンタジーシリーズの第一巻であるが、とても子供向けとは思えない、重厚な物語である。腕が立つ女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムを道すがらに助けたことから皇家のゴタゴタに巻き込まれる。二百年前に始まる新ヨゴ皇…

ぎぶそん/伊藤たかみ

バンドを組んでいる中学生たちの恋や友情を綴るヤングアダルトノベル。主役になるガク(リーダー、ボーカル、サイドギター)とリリイ(ドラムス)が各章を交代に語っているので、一方的ではない描写がされている。ガンズ&ローゼスに夢中なガクは、やや狷介…

りかさん/梨木香歩

日本的な情緒にあふれた児童向けファンタジーである。主人公のようこは一人で祖母の家へバスに乗っていけるようになったくらいだから、小学校の二年か三年くらいだろうか。祖母に「リカちゃん人形が欲しい」とお願いしたのに送られてきたのは「りか」という…

帰還 ゲド戦記4/アーシュラ・K・ル=グウィン

帰還―ゲド戦記〈4〉 (岩波少年文庫)作者: アーシュラ・K.ル=グウィン,マーガレット・チョドス=アーヴィン,Ursula K. Le Guin,清水真砂子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/02/17メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (9件) を…

算法少女/遠藤寛子 

三十年ほど前に書かれた児童向け時代小説であるが、江戸時代に実際に「算法少女」という算術指南書があったらしく、作者の分からないその本に、著者が想像で肉付けをしていったものだそうだ。町医者千葉桃三の娘おあきは、父から算法の手ほどきを受け、かな…

マイ・ホームタウン/熊谷達也

熊谷達也の面白さを知ってしまったので少しずつ読み進めている。直木賞受賞の際、書評家によるレビューが今イチの扱いだったのですっかり興味をなくしていたが、東北の民俗学をベースにした小説群は読んでみたら存外に面白いではないか。本作は、著者が小学…

こわれた腕環 ゲド戦記2/アーシュラ・K.ル=グウィン 

大魔法使いゲドの成長と苦悩と活躍を描くゲド戦記シリーズ第二巻である。カルガド帝国の王室は「名なき者たち(闇の者たち)」を信仰しており、墓所の大巫女が亡くなると、生まれ変わりと思しき幼児を跡継ぎに据え、次代の大巫女に育てる。アルハとして育っ…

影との戦い ゲド戦記1/アーシュラ・K.ル=グウィン

岩波少年文庫に入ったのを機についにゲド戦記シリーズを読み始めた。多島海(アーキペラゴ)地域の山羊飼いの家に生まれたハイタカ少年が大魔法使いになるまでを描いた成長ファンタジーという感じだろうか。ハイタカは素質を見込まれて大魔法使いに預けられ…

]ROCKER/小野寺史宜

気ままに生きている女子高生が音楽に目覚める青春小説。 両親が離婚し、母親が働いているのでわりあい野放図に生活している堀美実は、高校は卒業できるぎりぎりの日数しか行く気がなく、友人は作らず、従兄の永生(えいしょう)のアパートに入り浸る日々だ。…

フレディ 小さないのちの物語/レオ・ブスカリア

子供に死とは何かを教えるための写真絵本。以前に「葉っぱのフレディ」がブームになったが、「葉っぱ」よりも前に詩人の三木卓が翻訳したものである。 血止め式のhebakudanさんに本書のことを教えていただき、ぜひ読んでみたくなった。 内容については多分よ…

海辺の博覧会/芦原すなお 

「三丁目の夕日」のヒットと関係あるのかどうか、著者の少年時代と思しき1960年前後の悪ガキたちの遊びと生活を描いた、ユーモアとノスタルジーたっぷりの少年小説である。著者は香川県観音寺市の出身だから、この物語の舞台も多分そうなるのだろう。風…

歩く/ルイス・サッカー

穴" のスピンオフ作品で、「穴」の主人公スタンリーの収容所仲間だったアームピット(脇の下)が主役になっている。X・レイも登場しており、生き生きと描かれている。「穴」の時にはどちらもスタンリーにまとわりつく悪のイメージしかなく、このキャラ造形…

穴/ルイス・サッカー

4代前の先祖が豚を盗んだ罪によってかけられた呪いにより、まずい時にまずい場所に居合わせて不運を背負い込む運命となったイェールナッツ家の五代目スタンリー(太っちょの少年)は、先祖の前例通り、有名野球選手がチャリティーに寄付したスニーカーを盗…

カカオ80%の夏/永井するみ 

中高生向けミステリー叢書ミステリーYA!(理論社)の一冊。お嬢様の多い私立女子高で孤高を貫くクールな三浦凪が、夏休み中に行方不明になった友人雪絵を見つけるべく奮闘する女子高生ハードボイルドである。男に頼らなければ生きていけない大学教授の母を持…

青空のむこう/アレックス・シアラー

交通事故で死者の世界へ来てしまったハリー(10歳前後と思しき少年)は、姉のエギーと口げんかをした直後に死んでしまったことで、姉に悲惨な思いをさせているに違いないことを悔い、何とか仲直りしたいと考えている。そして、母を捜して150年間死者の…

チェスト!/登坂恵里香

主人公の吉川隼人は、薩摩伝統剣道の自顕流(示現流とはまた別の「じげんりゅう」らしい)を学ぶ、曲がったことが嫌いな活発な少年(小6)で「嘘をつくな。弱い者をいじめるな。負けるな。」の精神を範としている。しかし水に対する恐怖が強いカナヅチで、…

天山の巫女ソニン 一 黄金の燕/菅野雪虫

朝鮮半島と思しき架空の世界を舞台に、誠実で活発な落ちこぼれ巫女の活躍を描く児童向けファンタジーシリーズの第一巻。書評家の北上次郎が絶賛していたので読んでみたら確かに面白かった。 夢見の力で予言をする天山の巫女集団は、才能に目を付けた幼い娘を…

チェスト!/登坂恵里香 

主人公の吉川隼人は、曲がったことが嫌いな活発な少年(小6)だが、水に対する恐怖が強いカナヅチで、学校の伝統行事である錦江湾横断遠泳大会を2年続けて仮病で逃避しているヘタレでもある。海の男である脳天気な父ちゃんの厳命で、ついに遠泳に挑戦しなけ…

ユタと不思議な仲間たち

座敷童子が激写されたそうです(笑)。 http://npn.co.jp/article/detail/94164521/座敷童子で思い出すのでは「ユタと不思議な仲間たち/三浦哲郎」である。東京から転校してきて母親が働いている東北の旅館に暮らすユタ少年は、学校になじめず鬱々としてい…

飛ぶ教室/エーリヒ・ケストナー  山口四郎訳

光文社古典新訳文庫版の「飛ぶ教室/ケストナー」について下記のように書いたことがある。 http://lmp.nobody.jp/zakki_chou/06/tsurezure06.html#tobu_kyoushitsu 光文社古典新訳文庫版はとても不自然な翻訳に思えたが、その訳者がこき下ろしている(と思わ…

少年時代/池永陽

郡上踊りと清流で有名な郡上八幡を舞台にした少年小説である。 6年生までに高い橋から川へ飛び降りられたら一人前という因習がある町で、主人公の良平は中1になってもまだ飛べずにいる。彼の回りには、気の良い友人たち、優しい姉、個性的な教師がいて、淡…

光文社古典新訳文庫版「飛ぶ教室/エーリヒ・ケストナー」について

光文社古典新訳文庫版の「飛ぶ教室」について思うところを書いてみました。あの翻訳が気に入っている方、これから読んでみようと思っておられる方はお読みになりませぬようお願いいたします。 子供の頃からの愛読書だが、文庫本がなかなか入手出来ず、大人に…