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こわれた腕環 ゲド戦記2/アーシュラ・K.ル=グウィン 

大魔法使いゲドの成長と苦悩と活躍を描くゲド戦記シリーズ第二巻である。

カルガド帝国の王室は「名なき者たち(闇の者たち)」を信仰しており、墓所の大巫女が亡くなると、生まれ変わりと思しき幼児を跡継ぎに据え、次代の大巫女に育てる。アルハとして育った少女は、ある日墓所の迷路内をうろつく侵入者を発見して捕らえるが、これこそハイタカことゲドで、ゲドは、世に平和をもたらすエレス・アクベの腕環の片方を取り戻すために侵入したのであった。

本書のテーマは人間の意志の自由である。「自由はそれを担おうとする者にとって実に重い荷物である。勝手のわからない大きな荷物である。それは、決して気楽なものではない。自由は与えられるものではなくて、選択すべきものであり、しかもその選択は、かならずしも容易なものではないのだ。坂道をのぼった先に光があることはわかっていても、重い荷を負った旅人は、ついにその坂道をのぼりきれずに終わるかもしれない。」という一節にこのテーマが集約されているように思う。

第一作の影との戦いは分裂した自己を取り戻す話だし、「自分探し」が本シリーズのテーマなのかもしれないと思うと、「自分探し」に懐疑的な読者としてはやや受け入れがたいものもあるが、重いテーマをファンタジーの面白さにくるんで、とにかく読ませる。