本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

あねチャリ/川西蘭

引きこもりの女子高生が自転車と出会い、立ち直り、女子ケイリン選手として成長する姿を描く自転車青春小説である。

早坂凛は、中学時代はバレーボールチームの中心選手で、バレーボール強豪校に進学するが、負傷によりバレーボールをあきらめた末に引きこもりに。太り始めたことに愕然とし、ダイエットのために乗り始めた自転車でサイクリングロードを走っているとき、かつて恐竜と異名を取った競輪選手瀧口と出会い、自転車の魅力に取りつかれて弟子入り。そして、ギャンブルではなく、競技種目としてのケイリンにのめり込んでいく。

負けず嫌いで一本気の凛が楽しいが、強面ながら根はやさしい瀧口とか、凛が管理人をと勤める共同住居の住人で自分を上流階級の奥方と思い込んで厳格傲慢に振舞う小春さんとか、その他の登場人物も個性的で面白い。

スポーツをモチーフにした小説は、読者にスポーツを体験しているような高揚感を与えなければ成功ではないと思う。優れた自転車小説にはみなそういう気持よさがあるのだが、長時間の走行や駆け引きが描かれるロードレース小説と違い、本書の場合、舞台となるのがケイリンのため、あっという間に終わってしまうのが難点か。とは言え、疾走感はやはり快い。