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帰還 ゲド戦記4/アーシュラ・K・ル=グウィン

帰還―ゲド戦記〈4〉 (岩波少年文庫)

帰還―ゲド戦記〈4〉 (岩波少年文庫)

こわれた腕環」でゲドに救い出され、ゴントの大魔法使いオジオンに預けられたテナーは、オジオンのもとでの修行を捨て、農夫と結婚することを選び、現在は中年になって夫の亡き後ひとりで農園を切り盛りしている。

ゴントでは魔法やまじないが効かなくなり、治安が悪くなっている中、テナーは虐待されて死にかけた子供テルーを助ける。ゴントの社会は男性優位であり、自立して生きるテナーにはやや排他的な目が注がれているが、おそらく幼児虐待やフェミニズムを取り込んだ内容なのだろう。ここに、魔法使いとしての力を失ったゲドが絡むのだが、初老となったゲドの再生の物語でもあるのだなぁ。

終盤、トントンと物語が進んでしまい、もう少し葛藤があっても良かったのではないかと思うが、スリルや興奮度の上では四巻中一番だったかもしれない。