郡上踊りと清流で有名な郡上八幡を舞台にした少年小説である。
6年生までに高い橋から川へ飛び降りられたら一人前という因習がある町で、主人公の良平は中1になってもまだ飛べずにいる。彼の回りには、気の良い友人たち、優しい姉、個性的な教師がいて、淡い初恋、性への好奇心などもからんでおり、まぁ要するに、情緒のある古い町で、少年が一つ障害を乗り越えて成長する、わりあいありきたりの設定なのだろうなぁと思っていた。
が、さすがにそれだけの話ではなかった。ここまで破天荒な教師が登場する少年小説がかつてあっただろうか(笑)。どうにもならない事情を背負った大人たちと、子供故の無力さに直面している少年たちを描き、なかなかやるせない。
「良ちゃんは物事を考えすぎるからいかん。無駄なことに熱中することも必要なのだ」と力説する正太がなかなか魅力的だ。体力があり、曲がったことが嫌いな正義漢なのである。喧嘩番長と頭突き勝負を繰り返すあたりが白眉(笑)。
ありきたりな少年小説ではなかったという点では評価するが、やるせなさすぎの感も・・・。