本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

民俗・習俗的

海うそ/梨木香歩

ネタばらしあり注意。 日本的情緒を盛り込んだファンタジーを得意とする著者だが、本作にはスーパーナチュラルな要素は(ほとんど)ない。昭和初期、人文地理学(地域の歴史や地質や植生やらを雑多に研究するらしい)の若き研究者秋野は、調査のため南九州の…

赤朽葉家の伝説/桜庭一樹

赤朽葉家は古代よりたたら製鉄に携わり、文明開化後は近代製鉄を導入して、鳥取の僻村紅緑村に君臨してきた大家(たいけ)である。その赤朽葉家の盛衰を女三代を通してコミカルに描き、併せて戦後の世相史と青春を描いた大作。紅緑村に時折現れる山の民(サ…

統ばる島/池上永一

沖縄の風土ど土俗をモチーフにユーモラスなファンタジーを書いてきた池上永一は、このところ「シャングリ・ラ」「テンペスト」のようなスリリングな大作を発表していたが、本作は沖縄のさらの南の果てである八重山諸島の御嶽(うたき=祈願所)やツカサ(御…

狐笛のかなた/上橋菜穂子

守り人シリーズの著者による、中世あたりの日本を舞台にしたファンタジーだが、切ない恋愛小説であり、土地を巡る近親憎悪の物語であり、呪者同士のサイキックな戦いの物語であり、隷属させられた使い魔たちの自立の物語であり、実にさまざまな要素を含んで…

ダ・ヴィンチ・コード/ダン・ブラウン

宗教象徴学者ロバート・ラングドンが聖杯の謎を解くべく、フランス司法警察に追われながらフランスとイギリスをドタバタと駆けまわるノンストップ伝奇ミステリー。この話題作を今頃読んでいる(笑)。ルーブル美術館館長のジャック・ソニエールが狂信者と思…

世界屠畜紀行/内澤旬子

角川文庫新刊。皮革製本を趣味(仕事?)とするイラストルポライターの著者が、なぜ皮革と食肉の仕事は差別されるのかという疑問から、日本を始め、韓国、バリ、インド、チェコ、沖縄、アメリカ、あるいは動物福祉(人権のように「動物の権利」を主張するよ…