本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

統ばる島/池上永一

沖縄の風土ど土俗をモチーフにユーモラスなファンタジーを書いてきた池上永一は、このところ「シャングリ・ラ」「テンペスト」のようなスリリングな大作を発表していたが、本作は沖縄のさらの南の果てである八重山諸島の御嶽(うたき=祈願所)やツカサ(御嶽の祈祷者)やノロ信仰などを題材にしていて、デビュー作「パガージマヌパナス」のような楽しい作品群となっている。

統ばる島とは、諸島が一つに集まっていることと、島から読見えて信仰の対象ともなっているプレアデス星団(すばる)をかけているようだ。

神事の芸能を行うように神託の下った二人の中学生の困惑を描いた「竹富島」、携帯の基地局が出来る友人のいない言訳ができなくなり、リゾートホテルが出来ると勤め先のない言訳が出来なくなって困るという超ネガティブ女がこの世の楽園パイパティーローマを求めてこぎ出す「波照間島」、すべてがコンパクトで効率的な小浜島で、子供は大した苦労もなく効率的に育て上げ、何となく空虚感を抱えているパート主婦が洗骨(沖縄では、一度土葬にした死者を掘り上げ、一家の女性が汚れを洗い落として再び葬る習慣があるらしい)を通して家族の絆を再確認する「小浜島」、島の大らかさにイライラするエリート熱血女性教師とゆるゆるした子供たちのやり取りが笑える「黒島」など、どの作品も、風土と人間の関わりが楽しく描写されている。

シャングリ・ラ」も面白かったが、本作のような沖縄風土をモチーフにしたものもまた読みたいものだ。